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yamato…  古代とユキ 1

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  「奥の部屋はまだ段ボール積んだままだわ」

ユキが窓を開けて少し換気しながらそう言った

  「段ボール?」

すぐ生活できるようにと運んですぐ荷物を片づけたのでそれはなはずだ、と思いながら
一番奥の部屋へ向かうと部屋というより納戸の部分に段ボールが積まれていた

  「なんだろう?」

進は不思議に思い一つの箱を持った

  「軽いな…」

そう呟いた瞬間“ひょっとして…”と言いながら急いで箱を開けるとそこには美しい蝶が
ピンに刺されてたくさん並んでいた

  「標本…」

ユキは見たこともない美しい羽に見とれていた

  「とうさんの知り合いがくれたんだ。とうさん…先に運んでてくれたんだ。蝶だけ
   じゃない…全部運んでくれてたんだ…。」

進は次から次へと箱を開けながら懐かしそうに見入った

  「古代くんはこーゆーのが好きなの?」

ユキが不思議そうに聞くと

  「三浦は自然保護区域だったからね結構昆虫とかたくさんいたんだ。大学の先生
   なんかもよく来てた。で虫好き、って事がとうさんから漏れて…学生さんが作って
   いらない、って言った標本がうちに来るようになったわけ。…こわい?」

  「これって本物?」

ユキがおそるおそる聞くので

  「そう、かわいそうだけど生きたまま標本にするためにいろいろやることがあるんだ
   でもこの姿を一生残せるんだ…こうしてみてやるのが供養だって言ってた。」

  「ずっとこの姿なんだ…こんなきれいな蝶が飛んでいたらきっとほっとするわね」

  「あぁ…たぶんね」

進はヤマトの中のユキを思い出していた。女性乗組員は少なく看護士とレーダーの
オペレーター、生活班の班長をしてたユキは俺らより忙しくいつも走りまわっていた
進もそうだったが乗組員の誰もが一生懸命働くユキに好意を抱きふと見かけるだけで
ほっとしていたことを…本人は気付いていないようだったので進は思わず笑ってしまっ
た。

  「やだ、古代くん。私変なこと言った?」

真顔で聞いてきたので進はさらに面白くなってククク、と声に出して笑ってしまった

  「え~顔になんか付いてる?」

ユキはバッグから鏡を取り出すと鏡に向かい顔チェックを始めた

  「何も付いてない!」

ちょっと怒り気味のユキに進は

  「暗い林の中でこの蝶が飛んでたらほっとするだろ?ヤマトの中でユキを不意に
   見かけると…って言ってたの。知らないのユキだけ。みんなが…そう思ってた
   食事の時“お疲れ様、おいしい?”って声をかけられるだけでいつもの食事が
   数倍おいしく感じた、って言ってたから。…誰だったか忘れたけど…」

ユキは真っ赤になっていくのがわかった

  「すげえ競争率だったんだぜ?」

進の手は止まらず箱を次から次へと開けていた







作品名:yamato…  古代とユキ 1 作家名:kei