yamato… 古代とユキ 1
「ふぅ…ちょっと飲みすぎちゃったかしら…」
久々の再会でゆっくり話すことができたユキはそのことは満足だったがこんなに近くに
いるのにふたりっきりになれない事が残念だった
「いつになったらふたりでゆっくり時間を取れるんだろう…」
モールの洗面所で手をふき食事で落ちた口紅を薄く引きながらユキはつぶやいた
いつまでも鏡を眺めていても仕方ないので洗面所を出ると少し離れたところに進が
立っていた
「ユキが席外したの見えたからさ…ちょっと心配で…」
進はユキと食事する直前に拉致されたことが忘れられなかった
「うふふ、心配してきてくれたの?ありがと!…あれ?みんなは?」
ユキが店をのぞくと先ほどみんなが座っていた席は空席になりテーブルには誰もいな
い状態だった。と、その時ユキの携帯に南部からメールが入った
(ユキさぁん、古代をひとり残して俺ら独り者は寂しいのでおねぇちゃんのいる店に行
きます。さすがにユキさん連れて行くわけにいかないので古代を残して行きますから
後はどこにでも行っちゃってください。)
ユキは黙ってメールを進に見せた
「…ったく…ちょっと前まで部下だったくせに!」
進のまったく…、と言う顔は怒っているわけでなく照れ隠しだ。ユキは思い出したよ
うに進の手を引くとエスカレーターに向かい走り出した
「…ユキ、どこ行くんだよ?」
「うふふ…上よ。そこでサングラス買いましょう?私はそれと一緒に帽子も買っちゃ
おう!プチ変装したらきっとわからないわよ。モールは24時間営業だから…」
ユキは嬉しそうにエスカレーターを駆け上った
「古代、ユキを迎えに行けよ。またいなくなったら困るだろ?」
島がユキが洗面所に向かうのを見て隣の進の脇をつついてそう言った
「そうだ、古代、行って来い。ここはもうお開きにするから。会費は後で回収するから
さっさと行け。俺たちはおねぇちゃんのいる店に行ってくるから!」
南部がそう言うと真田が清算ボタンを押した
「ユキの分はみんなで割り勘でいいよな?」
真田の一声にみんながうなずく。しかしひとり
「古代に上乗せしても大丈夫ですよ!」
太田だった
「真田さんそれでいいですから…」
と進が自分の荷物とユキの荷物を持ってそう言ったが
「ばぁかお前だけのユキじゃぁないぞ?」
そう言って笑い“さっさと行け”付け加えた
作品名:yamato… 古代とユキ 1 作家名:kei