yamato… 古代とユキ 2
「…へぇ…古代さんは紅茶が好きなんだ。」
父親もこりゃめずらしい、と言わんばかりにソファーで紅茶を一口飲んで言った
「若い子はコーヒー派かなって思ってたよ。」(父)
「私も驚いたわ。香りをかいでから飲んだもんだから…でもどうして紅茶?」(母)
「幼いころ背が小さかったのでコーヒーは飲ませてくれませんでした。代わりに
紅茶だったんです。でも最近は葉の茶なんて贅沢で…」(進)
ユキの両親は“ヤマトの艦長代理”という進をひとりの青年と見ていなかったことに
気付いた。貴重ではあるが普通の紅茶をおいしそうに飲んで普通に笑っている…
そして横に座るユキの柔らかい眼差し…いつも意地っ張りで絶対に引かない娘と
同一人物と思えなかった。
一瞬リビングがシンとなったところで進が立ち上がった
「今日、森さんにお願いがあって参りました。今日はどうしてもユキさんとの交際を
認めてもらおうと思い参りました。平和になった地球でユキさんと一緒に未来を
歩きたいと思っています。あの1年は私たち二人にとって人としていろいろ考え
させられました。そして人にはいろんな尺度があると分かった1年でもあります。
乗組員は家族のように毎日同じ面子と顔を合わせ同じ目的を果たすために必死
に戦いました。私は近いうちに護衛艦に乗りまた宇宙へ行きます。けれどそれは
ユキさんを放るわけではありません。彼女もつらい1年間の航海を経験していま
す。そばにいるだけが幸せじゃないと分かってくれています。
どうかお願いです。若いと言われてもしょうがないと思いますがユキさんと結婚を
前提とした交際をを認めてください。」
進は深々と頭を下げた。ユキも一緒に頭を下げた。
「古代さん、頭上げてください。」
父が優しい口調で言うと二人はそっと頭をあげた
「君たちは若い。まだ人生の上で社会に出たばかりだ。こんなに早く一生のあいて
を決めなくていいと思うんだが…それは君たちの1年を知らないからそう言ってし
まうのだろうな。」
「あなた!」
父は今すぐ許すような口調で優しく進に問いかけたが母はそれを阻止するような口調
で父を呼んだ
「ママ、これはユキの人生だ。ユキの選んだ人を信じるしかないじゃないか。」
そう言って紅茶を飲み干すと
「うまかった。進君、また来なさい。」
父は立ち上がってお風呂の支度はできてるか?と言ってリビングから出て行った
唖然とする母は慌てて父の後を追う
「あなた、どういう…」
「きみにもわかっているだろう?あの二人に何を言っても無駄だ。ユキも私たちの
事なんて聞くわけなかろう。あの子は…12歳で私たちの手元を離れてから…
ひとりで頑張ってきたんだ。」
母は何も言えなかった
「「おじゃましました」」
無口でリビングに戻ってきた母に挨拶すると二人は森家を後にした
作品名:yamato… 古代とユキ 2 作家名:kei