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yamato… 古代とユキ 2

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エアカーは静かに走り出した。二人は何も言わずただお互いの手を握り合ってその
存在を確かめあうように寄り添って座っていた。BGMはあらかじめ南部が用意した
のだろうか、静かな音楽が緩やかに流れていた

  「お待たせしました」

ホテルの裏口に着くと運転手が進の横のドアを開けた

  「おぼっちゃまから裏口に着けるよういいつかっておりますので失礼ですがこちら
   の入り口からスイートへ向かってほしいとの事です。わたくしがフロントへ行きま
   すからどうぞ…」

ユキが世話になっている時何度となく通った裏口。スイートまでは目をつむっても
行けるほど何度も行き来したところだ

  「えぇ…でも…」

そこまでしてもらうのは申し訳なさそうにユキが何か言いだしそうだったが

  「おぼっちゃまが“ホテルに二人でいるところを撮られないように”と念を押されて
   おりますので。」

南部らしいユキの両親に対しての誠意だろう。進は“お願いします”と言うとエレベー
ターの方へ向かった。



途中エレベーターを乗り換えて最上階のスイートに着いた

  「ただいま、って感じだな」

進はそういうとユキを先に部屋に入れた



  「いらっしゃいませ。本日はご来店ありがとうございます。おぼっちゃまから
   お世話するよう仰せつかっております支配人の…」

支配人が挨拶してる間に給仕がふたりテーブルに着き椅子を引いていた。二人は
促されるまま椅子に腰かけると隣の部屋から料理が運ばれてきた





  「こちら、最後のデザートになります。」

緊張のあまりよく味もわからないまま気付くと最後のデザートになっていた。

贅沢なまでにフルーツをたっぷり乗せたタルトとチーズケーキ…
そして贅沢な香りを漂わせている紅茶…


支配人は紅茶のお代りをテーブルに置き

  「お紅茶のお代りはこちらです。どうぞお二人でごゆっくりなさってください。」

そういうと深く頭を下げると部屋を出て行った

  「ふぅ」

進が一気に背もたれにもたれかかった

  「やぁだ、古代くん、まだ食べ終わってないわよ?…でもそんな気分よね。おいし
   いけどいまいち味がわからなかったわ。…でもこのフルーツ、おいしそう!」

ユキがタルトの上にのっているイチゴを食べた

  「うん、甘酸っぱいイチゴだわ。おいしい!」

進はその姿を嬉しそうに紅茶を飲みながら見てる

  「チーズケーキもきっとおいしいわね。あ、でもこんなに食べたら太っちゃうかしら」

一瞬フォークを置くふりをしたが

  「ヤマトじゃそんな贅沢なもの食べられなかっただろ?しっかり食べなよ」

進が紅茶をおいてチーズケーキを食べた

  「お、うまいぞ!本物のチーズ使ってるな。下の生地もうまい。」

あっという間にチーズケーキを平らげてしまう進に

  「ん、もう!もう少しじっくり味わったらどうなの?」

そういいつつもユキの顔も笑っている

  「しっかり味わってるって!あーうまい!」

進は今自分が去年と比べてどれだけ幸せか守に伝えたい気持ちでいっぱいだった



  「守さん、スターシアさんと幸せかしら」

ユキがふとまっすぐな瞳で進を見た

  「…幸せだと思うよ、俺の次にね。」

ユキは進を見て不思議な人だな、と改めて感じた。誰よりも鈍くて女の子の心なんて
何もわからなさそうなのに突然こんなふうにさらっといってのけてしまう時がある

  「…ユキ?どうしたの?」

進は慌てて席を立ってユキの横に来た

  「俺、なんか悪い事言った?」

ユキは自分が泣いていることに気付いた。進はユキの後ろでオロオロしている

  「ううん、幸せすぎて気持ちに頭がついてこれないのよ、きっと。」

そう言ってにっこり笑って涙を拭いた。ユキの一言に安心したのか進もほっとして
ユキの横に来ると拭いてもあふれてくる涙を拭いた

  「俺ね、一年前の事思い出してたの。」
  「一年前?」
  「そう、兄さんが帰ってこなくて本当に一人になってしまったとそう思ってた頃
   なんだよね。でも兄さんは生きてて遠いけど生きてて幸せになろうとしてる
   そして俺はヤマトで家族以上の仲間を得て…何よりもユキがこうして…
   生きてそばにいてくれる。今の俺より幸せな奴はいないと思うよ」


作品名:yamato… 古代とユキ 2 作家名:kei