yamato… 古代とユキ 2
食事を終えた二人はスイートを出るとユキを裏口に残し進がフロントへ行き挨拶を
して裏口にやってきた。ユキがその間にタクシーを呼んでいたのでそのまま寮へ
向かった
「遅くなっちゃたわね、古代君明日大丈夫?」
ユキの携帯の時計は11時半を表示していた
「あぁこの時間はまだいつも起きてるし…フロ入って寝るだけだからな。ユキは?」
「えぇ、わたしはシャワー済ませてゴロゴロしてる頃かしら。」
「明日、仕事遅れるなよ。おやすみ」
タクシーは先にユキの寮に着いた。ユキはタクシーを降りると手を振りながら
「今日はありがとう、おやすみなさい」
「俺の方こそ…おやすみ。運転手さん、お願いします」
進がそう言うとタクシーは静かに走り出した。ユキはタクシーが見えなくなるまで
見送った
「あ、南部くん?」
ユキは部屋に入ると南部に電話をした
<あ、ユキさん、お疲れ様です>
いつもの南部の明るい声と顔が携帯に映る
「今日は何から何までありがとう。おいしいお食事だったわ。なんだか申し訳ない
くらいだわ。」
<イヤイヤ、去年一年分でユキさんにお世話になった分のほんの一部をお返し
したまでですよ。あれ?寮ですか?>
「えぇ、もちろんよ。どうして?」
<スイート、一泊でとっておいたんですけど…>
ユキは一瞬何のことかわからなくて“?”という顔をしたがすぐ真っ赤になった。
しかし南部は知らん顔して話を続ける
<ったく、あいつはどうしてお膳立てしてやってるのにダメなんでしょうね。
今日一日くらいゆっくりしたってバチは当たらないのに。>
南部はマイペースである
<まぁ、いつでも言ってください。いつでも部屋をお貸ししますから!>
そう言ってさっさと南部は電話を切ってしまった
「ん、もう!南部くん、ったら!」
ユキはすでに何も表示されていない画面に向かってひとりごちた
「…と、しっかり姫はお礼の電話入ったねえ。律義な方だこと。」
南部が振り返ると画面に映らないところに進がいた
「お前ねぇ、一泊、って!」(進)
「だって記念日だろ?それだってアリじゃねぇか!」(南部)
「アリじゃねぇよ!(真っ赤になって)」(進)
「もぉ~奥手なんだからぁ、進くんったら!」(南部)
「南部!!!」(進)
「僕は公私共に古代の縁の下の力持ち、ですからね。結婚式の準備の手伝い
もして差し上げますよ。うちのホテル、何処使ってもいいですよ」(南部)
「………」
進はすっかり南部のペースにはまってしまっているがそれから脱することができ
ずにいる
「だいたいねぇ、ユキさん独り占めしようとしてるヤツに人権があると思って
るの?よく覚えておけ?周りはいつでもユキさんに手を出そうとしてる
ヤツばっかりだ。いっそ婚約しましたって言っちゃった方がユキさんも
気分的に楽だと思うぜ?」
南部の言葉に何も言い返せない進だった
「ちゃんと話し合えよ。お前たちが一緒になることは死んでいった仲間も
望んでる事だ。ユキさんを安心させる意味でも公表したほうがいいと
思うぜ?」
「…そうだな…明日話すよ。いろいろありがとうな」
そう言って安心したように笑う進をみて南部はこう言った
「お前、ホンット変ったよな。」(南部)
「ん?」(進)
「いい顔してるって事だよ。そんな風に笑った顔あんま見たことない。
やっぱりユキさんは偉大だな。大事にしろよ?泣かせたら俺たちが
黙っちゃいないからな!」(南部)
そう言うと南部は追いだすように進を部屋から出してしまった。進はお礼を
言いに南部の部屋に行ったのに結局あやふやなありがとう、だけしか
言えず廊下にポツンと立たされてしまい仕方ないので自分の部屋に戻った
作品名:yamato… 古代とユキ 2 作家名:kei