yamato… 古代とユキ 4
「ユキが怖い思いをした事は忘れていない。」
進がユキの涙を拭きながら続ける
「でも…俺さ、男だから…」
ユキに進の気持ちは届いているがやはり岡本の事はトラウマになっていて
なかなかぬぐい去ることはできない
「無理強いはしないから…ゴメン。怖かったよな…でも俺も決してふざけた
気持ちなんかじゃない。誰よりも大切に思ってる…」
そう言うといつものようにやさしくキスをした
「古代くん…」
「さぁ寝よう。まだ時間はたっぷりあるし…ユキは前のベッド使って。
俺も前使ってた方使うから。」
進がソファーから立ち上がりベッドの方へ向かって歩き出したがユキが
立ち止ったままだった
「ユキ?」
進が近寄って下を向いてるユキの顔を覗き込むと涙がポロポロ落ちていた
「許してくれないの?」
ユキはブンブン頭を振って否定した。その時進の手に涙が飛んできた
「私…」
話そうにも涙が邪魔でうまく話せない
「どうした?」
ユキは自分の気持ちをどう伝えたらいいのかわからなかった。そこにもちろん
岡本との事も引っかかっている。ただ進にすべてを委ねれば気持ちも楽になる
事くらいわかっているけれどそれが出来ないでいる…
「いつかきっとあのことは忘れちゃうって。ユキにとってとても辛いことが
あったって事しか俺には分からないけどその不安な気持ち、忘れちゃう
くらい幸せなことが待ってるはずだよ。…なんて偉そうなこと言ってるけど
俺と一緒で大丈夫かな?なんて思ったりするけど…」
進はそう言うとユキの手を取ってベッドのわきまで連れていくとじゃぁ、と言って
部屋を出て行った
ユキは進の出て行った扉をじっと見つめていたが別の部屋に入る気配を感じ
小さなため息をひとつついてそっとベッドに腰かけた
(ユキのバカ…どうして身構えてしまうの?相手は古代くんなのに…)
ユキも看護師だったから精神的な衝動の影響の深さをよく知っている…が
それはあくまでも理論上のことでまさか自分に降りかかってくることとは
思っていなかった。そして進自身がそれを乗り越えた、というのも知る由も
なかった
進が10代で乗り越えなければいけなかった両親の死、進のせいではないが
自分が我ままを言わなければ、兄さんに会いに行きたい、と言わなければ
両親と揃って地下都市で暮らせていたかもしれない…その気持ちを埋めるために
訓練学校へ志願してがむしゃらに勉強と訓練を重ねてきた事…
そして仲間との出会いが進のトラウマをいつの間にか消していてくれた事…
ユキはベッドに横になりブランケットをかけた
(わかんない…どうしたらいいの?私は古代くんに何をしてあげられるの?)
ふとネックレスを触るしぐさをしたがなかったので洗面所に置いたままだった
事を思い出し
(いけない…なくしちゃったら大変だわ。)
ユキはベッドから出ると部屋を出て洗面所へ向かった。ネックレスは洗面所の
ジュエリー受けに置いてあった
(よかった…古代くんが最初にくれたプレゼント…)
ユキはイスカンダルのダイヤモンドにそっとキスをするとそれを身に付けて
部屋に戻った
(スターシアさん、お元気かしら…スターシアさんも守さんと一緒に暮らして
最初ってどうだったのかしら?妹さんと二人しかいない星で暮らしてた、
って事は守さんがきっと最初の男性、って事になるわよね…やっぱり
最初って不安なのかしら…)
ユキはここであることに気付く
(きっと守さんは伝説になってるくらいの人だからモテモテだったでしょうから
女性経験豊富そうよね…古代くん、ってどうなのかしら?今まで訓練で
明け暮れてると…でも古代くんもモテそうよね?)
ユキはベッドの中で真っ赤になっていた
(ヤダ…さっき、思い切り抵抗しちゃったのに変なこと考えちゃってる…
寝なくちゃ今日の業務に支障が出ちゃうわ)
ユキは目を閉じた
作品名:yamato… 古代とユキ 4 作家名:kei