yamato… 古代とユキ 4
(今日は急ぎすぎたよなぁ…南部が変なメール寄こすからだ)
進はそれを南部のせいにして終わらせようとしたが
(ユキにとって岡本との事は忘れたいことだけど脳裏に焼き付いて忘れられない
事なんだろうな…多分未遂で終わったけどユキのこと襲ったんだろうな。
ユキは自分のことを汚れてる、って言ってたっけ…それだけ追いつめられた、
って事だよな。でもユキの感じから行くとその一線は越えていない、って感じ
なんだよな。でもユキの性格上自分的に許せない事だったんだろうな…)
進は隣に聞こえないように小さなため息をついた
(どうしたらユキの心は癒されるんだろう…)
身を投げ出すようにベッドに横になると習慣なのか睡魔が襲ってきた
(兄さん…)
進はすぐに眠りに落ちた
朝8時、ユキの通信機がなった。うつらうつらしていたユキは通信機を手に取ると
「はい、森ユキです。長官、お疲れ様です」
相手は長官だった
〈おはよう、ユキ。まだ眠っていたようだねすまない、起こしてしまったね。
ところで今、どこにいる?〉
「南部君がホテル用意してくれたので寮に戻っていません」
〈そうか、それは南部は気の利くやつだな。実は今日なんだが、多分キミが
来たら大変なことになりそうなので2日休暇を取ってほしいと思ってな。
いや、今日のスケジュールはゆとりがあるし昨日発表で3日もすれば
マスコミも落ち着くだろうと思ってね。古代にも私から連絡するから…
まぁ古代は出発が近いから今日一日だけの休暇になるが…まぁ最近
忙しかったしゆっくり休んでくれたまえ〉
「長官、お言葉に甘えてもよろしいんでしょうか?」
〈何を言っているのかね?発表したのは我々の都合であるのにキミたちに
迷惑かけてしまって本当に申し訳ないと思っている。なに、すぐ別の話題で
マスコミも別の方へ向くだろう。朝早くすまなかったね。一応通信機はいつ
でも出られるように持っていてくれたまえ。3日後のスケジュールで変更、
追加事項が出たらすぐ知らせるから。大きな会議が入っているが
こっちで詰めておくから大体のところは大丈夫だろう。〉
そう言うと長官は静かに敬礼した。ユキもすかさず敬礼をする。しばらくすると長官
がにっこり笑って画面は消えた
ユキは大きな伸びをした隣の部屋の様子を伺おうとして聞き耳を立てていたが
特に何も聞こえない。ユキはベッドルームを出た時隣から呻くような声が聞こえた
ユキは慌てて進のベッドルームへ入った。そこにはいつもと違う進が苦しそうに
胸を押さえて汗だくでもがいていた
「古代くん!」
進の右手は胸を押さえ左手はブランケットをすごい力で握っていた
「どこか苦しいの?古代くん!古代くん!!」
ユキは進の左手を右手で被い左手で背中をさすった。するとブランケットを握って
いた左手がユキの手をつかんだ
「かあさん?」
まるで少年のようなつぶやきだった
「かあさん、無事だったの?大丈夫?よかった…とうさんがいないんだ…
一緒じゃなかったの?一緒に探そう…どこか痛いところない?僕は
大丈夫だよ。ちょっと胸が苦しかったけど…母さんの顔見たら治っちゃった
ねぇかあさん、とうさんどこかなぁ」
目は閉じたままだった。今まで指の骨が折れるんじゃないかと思うほどの力で
握っていた左手もいつもの優しい進の手に戻っていた
ユキは進の両親が遊星爆弾で亡くなったという漠然とした事実しか知らない。
なぜ進が夢に見るほどまで心を痛めているのか分からなかった
いつしか進は規則正しい寝息を立てていた。ユキの手を握っていた左手も
力が抜けてだらんと宙に浮いている
きっと誰も気付かなかったがこんな夢を何度も見たんだろうと察しはついた
(きっと古代くんは両親の死を受け入れられずにいるんじゃないかしら…)
聞こうにも兄、守はイスカンダル。通信を飛ばして聴ける距離じゃない…
ユキは洗面所に行ってハンドタオルを濡らし汗の光る額を拭いた
作品名:yamato… 古代とユキ 4 作家名:kei