yamato… 古代とユキ 5
いつしか進は静かに寝息を立て始めた。ユキは切なくなって涙が止まらなかった
進の心の闇の原因を見つけた瞬間でもあった。
進は両親を自分が殺してしまったとそう思い続けていておそらく自分が幸せに
なることに負い目を感じている…そう思った。夢の中の13歳の進はまさしく家族
に囲まれていた少年時代の一番幸せな時だったのだろう…
(古代くんを救いたい…私に何ができるの?)
ユキは癖のあるやわらかな進の髪の毛をそっとなでながらいつしか眠ってしまった
「ユキ?」
進はユキが横で寝てるのに驚いて飛び起きてしまった。しかしユキは大した事
なさそうに起きると
「う~ん、よく寝た…あ、古代くんおはよう。朝ごはんどうする?途中で食
べる?持ってきてもらう?」
おおきく伸びをしてあくびを抑えながら起きたユキが進に尋ねると
「…たぶん二人で出て行ったら大騒ぎになるかもしれないからココで…」
進の方が縮こまって答えると
「じゃぁ頼んじゃうわね。」
そう言ってユキはベッドを降りて進の寝室を出て行った
(…ヤバぃ~うっかり寝ちゃったのね…私も。でもあの古代くんの焦りよう
ちょっと面白かったわ。でも夢の事は覚えていないようね。)
ユキはフロントにお願いして朝食を運んでもらうよう手配した
(なんでユキが俺のベッドで寝てたんだ?ユキが間違えたのか?でも
そしたらユキだって俺が寝てたら驚くはずだよなぁ?)
進はベッドに座って考えた
(うぁ?わっかんねぇ…覚えてねぇって事は何もしてないか?)
寝癖もそのままで動けない進に
「ねぇ、古代くん、紅茶入ったわよ~」
ユキの声で我に返り寝室を出た
「ユキ、なんでいたの?」
ユキは動揺を見られまいと必死に隠しながら
「どうもトイレの帰りに間違えちゃたみたい…ごめんなさいね。狭かった
でしょ?」
そう言いながら紅茶の入ったカップを進の前に出した
「…ありがとう。」
進は“古代くんのそばで寝たかった”と言う甘い言葉を期待したがはやり…
と思い
「そうか、間違えちゃったのか。」
「えぇ、ごめんなさいね、あ、そうそう、朝食すぐ用意できますって。」
ユキは進の鈍さに感謝した
しばらくすると朝食が運ばれてきた
「「いただきます」」
ユキは笑顔で進は納得いかない様子で朝食を食べ始めた
「行ってくる」
進は出発まで余り日がないのと2日後に迫った各大陸大統領の会合の
護衛の会議に出席するためにいつもより早い出勤となった。ユキは定時
出社だったので11時半頃出ても余裕だったのでひとり部屋に残った
進が出て行った瞬間ユキの顔から笑顔が消えた。そして自分の携帯で
中央病院へ電話をかけた
〈中央病院です〉
「以前看護師で働いていた森と申します。恐れ入りますがモリタ先生
はおいでになられますか?」
「モリタですね?…………今日は明けですね。間もなく詰め所に戻って
くると思いますが…あ、今お見えになりました。代わりますので少々
お待ちください」
ユキは先日モリタのシフトを確認していた
〈お待たせいたしました、モリタですが…〉
ちょっと不思議そうに出たモリタにユキが
「初めまして、私、森ユキと申します。」
モリタはその名前に引っかかるものを感じた
「すみません、あの…実は私…古代進さんの…」
ユキがそう言った瞬間モリタは思い出したように
〈あぁ!はい、噂は……そうでしたね、うちにいたんですよね。直接
存じ上げず失礼いたしました。…だいたいの察しはついています
少しお時間ありますか?〉
本来ユキが聞くことをモリタは言って来た。
「今日は11時半に出勤なので…」
〈よろしければ私のラボへお越しください。お待ちしています〉
そう言うとモリタは電話を切った。ユキはこんなにすぐモリタと話せると
思っていなかったので慌てて用意すると急いで中央病院へ向かった。
作品名:yamato… 古代とユキ 5 作家名:kei