yamato… 古代とユキ 6
「ユキか。どうした?」
真田の優しい声がユキの心を落ち着かせる
「真田さんの声が聞きたかったの…なぁんてね…でもホント。
それと今日のお礼が言いたかったの。忙しいのにすみません
でした。手は大丈夫でしたか?」
ユキは義手と知っていた
<大丈夫だ、表面は少し解けたが仕事に支障はない。ユキが
心配するほどの事じゃない。それよりユキこそ大丈夫か?
一番信頼してたところで思わぬほつれがでてしまった。不可
抗力とはいえショックだろう?>
「えぇ…全くショックじゃないって言ったらウソになりますが一番
ショック受けてるの南部くんですよね。」
<あぁ…間違いなく南部だろうな。でもこればかりは防ぎようがなか
ったからな…>
「だから南部君に電話するの気が引けちゃって…」
ユキが困った顔をした時画面が南部に変わった
<すみません、真田さんの部屋に潜り込んでいます>
「え?やだ、南部くん!全部聞いてたのね?ずるいわ。」
<ずるいったってユキさんが確認もしないで話し始めちゃうんですから
しょうがないですよね。私は大丈夫です。ユキさんがそんな風に思っ
てくれてたと思えばそれだけで充分です。明日頑張る気力出てきま
したよ!>
南部が笑顔で言うと
「よかった…やっぱり南部くんはいつもの南部くんでないとね。
夜遅くにごめんなさい。ふたりともおやすみなさい。」
ユキはそう笑顔で言うと電話を切った
「ユキさん相当参ってますよね?」(相原)
「あぁ普通なら笑っていられないよな。死線を越えてきた人の強さ
なんですかね?」(太田)
「でも自分がしっかりしないと、って思って必死なんですよ。自分に
何かがあっても長官を守らなきゃって思ってる人だから…」(南部)
「だからこそ自分が原因で長官に何かがあったら大変だと今日の
事で身にしみたんだろう。」
真田は自分の携帯を見ながらそう言った
「何事からも逃げない、とユキの宣戦布告なのかもしれないな」
真田の部屋に島以外のクルーが集合していた。島はすでに到着してる
VIPの出迎えだったので庁舎にいなかったのだ。
「明日はVIPの到着で長官とユキは出迎えで忙しいはずだ。気を
緩めず…頼むぞ。」
真田が全員の眼を見て頭を下げた。
「ふぅ」
進はあっという間にシャワーを浴び終えてリビングに髪の毛を拭きなが
ら入ってきた。
「ビール飲む?」
ユキがグラスを二つ片手に持ってビールを一本持っていた
「明日以降は多分ゆっくりできないし…」
進は素直にグラスをひとつ手に取るとユキがビールを注ぎその後進が
ビールを持つとユキのグラスに注いだ
「いただきます」
そう言うと進はゴクゴクと喉を鳴らしながらユキはグラスの半分ほどを
飲んだ
「明日は忙しくなるわね。私はエアポートで一日出迎えだわ。すで
にいらしてる方もいるけど…」
ユキはソファーに座りながらつぶやくように言うと
「あぁ…そうだな。エアポートとなれば八方から狙われるという事
だからな。でもそこにはブラックタイガー隊が控えてるから大丈夫
だ。」(進)
「そうね、やっぱりヤマトクルーがいるだけで安心するわ。」
進もユキの横に座った。ユキは空いたグラスに残りのビールを注ぐ
「全てが終わるまできっとここへは戻れないと思うわ。」
ユキは進が夜うなされやしないか心配だった
「そうだな、ユキ、パーティーの時目の下にクマができないよう
ちゃんと寝ろよ?」
進は半分ふざけていたが
「秘書は秘書の部屋があてがわれるんだよな…一緒にいられな
いのは俺としては心配なんだけど…移動中は島たちがしっかり
守ってくれる。」
ユキはそっと進の肩に体を預けた
「そうね…きっと大丈夫よ。」
作品名:yamato… 古代とユキ 6 作家名:kei