yamato… 古代とユキ 6
翌日二人はいつもより早く出勤した。ユキは出迎えがあったのと進は
護衛の最終打ち合わせがあったからだった
「長官、お時間です」
ユキがそう言うと長官は腰を上げて
「今日は一日エアポートか。立ちっぱなしで疲れるかもしれんな。
ユキ、頼むよ。」
藤堂はそう言うとユキの肩をポンポンと二回叩いた。ユキは笑顔で
返事をする。
藤堂の前に大崎が歩きユキと相原がその後ろに並んで歩く
4人はパトカーに先導されながらエアカーでエアポートに向かった
(…始まるのね…)
エアカーの中は無言だった
午後3時、最後のチャーター便が入ってきた。黒づくめのスーツ男
(SP)に囲まれた長官とユキが出迎える。
最後に来たのはヨーロッパの代表だった
長官がヨーロッパの代表と右手でがっちり握手をするとユキが
ファーストレディ相手に両手で握手をする。4人そろったところ
で記者に顔を向けて写真を撮らせる。
今日、一日何度も繰り返されてきた行事だった
ユキは光るフラッシュの間に不自然な人影を見た
ユキはとっさに記者に背を向けてファーストレディを庇うような
姿勢を撮った瞬間ユキの背中を光が抜けて行った
SPたちが記者たちを押しのけるかのように長官と4人を囲った
と同時に相原はその男に向かってレーザーを向けた
<出力は最小にしてある…当っても麻酔銃くらいの程度だ>
相原から向けられた細い光の線は見事に走ってる男の足に命中し
その男は足元から崩れた。相原は後をブラックタイガー隊に任せ
ユキへ駆け寄った
「ユキさん!ユキさん!!」
すでにユキの周りにはSPたちが長官たちを庇うように囲って
いた
「痛…っつ」
ユキが右ひじを庇いながら立ち上がりファーストレディの手を
取り立ち上がらせた
「お怪我は…」
ユキはそう問いかけると
「ありがとう、大丈夫よ。あなたのおかげね。少し驚いた
だけよ。あなたこそ…ほら、けがしてしまったわ。」
そう言って心配そうにユキの右腕を触った
「あ、お手が汚れてしまいます。私は大丈夫ですから…
早くお車に移動しましょう…大変危ない目に遭わせて
しまって本当に申し訳なく思います。」(ユキ)
「何を言ってるの?汚いだなんて…本当にありがとう。
今は何処に行っても安全な所なんてありません。例え
それが治安のいい日本の場合でも同じです。今平和に
なったからこそ今までと違った問題が出てきました。
危ないところを助けてもらって…あなたの事をそんな
風に思えないわ。ちゃんと手当してもらってね。」
ファーストレディはそういうと自分のハンカチを傷口に当てて
会釈してエアカーに乗ってホテルへ向かった
「ユキさん…」
「あぁ…相原くん…」
ユキは相原の顔を見たら安心したのかその場に座り込んだ
「大丈夫よ、多分髪の毛かすめただけだと思うわ。
ちょっと焦げたにおいがしたから」
相原がユキの後ろを見ると確かに髪の毛が一か所チリチリに
なっていた
「ユキ、大丈夫か?」
大統領を見送った藤堂も心配そうにユキの横にしゃがんだ
「あ、すみません」
ユキは立ち上がろうとしたが藤堂はそれを制して
「いや、いい。(後ろを向いて)エアカーを用意してくれ
病院へ行く」(藤堂)
「長官、私は大丈夫です。」
ユキはそう言ったが
「右腕は以前ひびが入った方だろう?念のため佐渡さんに
診てもらいなさい。それで何もなければいいんだから。
今日はもう任務はないはずだ。相原、付き添い頼めるか?」
「はい、大丈夫です…がここの後の処理は…」
相原が自分が撃った男の事を考えたが
「相原、残念だがアンドロイドだった。」(加藤)
加藤と山本が報告に来た
「やはりそうか…ちょっと走りかたがぎこちないな、と思った
んだよ。やけにまっすぐ走るし…」
相原がため息交じりに言うと
「んなわけでここは俺達だけで大丈夫だからお前はユキさんに
ついて佐渡先生のところへ行ってやってくれよ。」
そこへエアカーが入って来たので山本がユキの手を取りそっと
立たせるとエアカーの扉を開けて“どうぞ”と言った
「佐渡先生には私から連絡しておくから」
藤堂にそう言われると何も言えずユキは頭を下げた。後から相原が
乗ってエアカーは中央病院へ向かった
作品名:yamato… 古代とユキ 6 作家名:kei