yamato… 古代とユキ 7
「ユキ?」
ホテルに向かうエアカーの中でユキは無言だった
「ユキ?どうした?」
ユキは静かに涙を流していた。
「大丈夫か?」
進はそっとユキの肩を抱いた
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
小さな声だった…ユキが泣きながら進に謝っていた
「なんで謝る?」
進がやさしく聞くと
「古代くんの一番辛いところを…」
その後言葉が繋がらなかった
「いいんだ、本当の事だから。」
「古代くん…」
進はぎゅっと固く握り締められているユキの手をそっと包んだ
エアカーはホテルの裏口に付けてくれたので二人は誰に会う事もなくユキの部屋についた
「先にシャワー浴びておいでよ。」
進の一言に“じゃぁ”と言ってユキはシャワー室へ向かった。
(今日はいろいろありすぎたわ…ママにも連絡してないし…
報道されたかしら)
少しぬるめのお湯を張って肩まで浸かっていた
(きっと古代くん、傷付いたはず…それでなくても今精神的に辛い時
なのに…モリタ先生、私古代くんを追いつめてしまったかもしれな
い…どうしたらいいのでしょう…)
ユキの瞳から涙がポロポロ流れる
(古代くんだけじゃない…真田さんも…でもヤマトに乗り込んだみん
なの事を否定するような…許せない…絶対に許せない!)
でも終わってしまった事でユキにどうしようもできない。進は思ったより
穏やかだった。
(私にできることなんて何もない…)
ユキは自分の無力さを感じて涙が止まらなかった
シャワー室から水の音がするのを確認して進が携帯を手に取った
「真田さんですか?」
<お疲れさん、ユキはどうだ?>
「かなり疲れてるみたいです。ぐったりしてますよ。」
<だろうな…そっとしておいてやってくれな。>
「…了解。」
<古代…お前、大丈夫か?>
「大丈夫ですよ…でもお互い様、でしょうかね」
進が力なく笑った。真田と電話を切るとユキの父に連絡を取った
「古代です」
<やぁ、今日は忙しかっただろう?>
パーティーの後の事は報道されていなかった
「実は今日…」
進は全ての事を隠さず話した。
<そうか…キミも辛かっただろう。>
ユキの父は進の事を気遣った
「でもユキが…」
<ユキは大丈夫だ。進くんがそばにいればきっとユキは大丈夫。>
「すみませんでした…危険な目に遭わせてしまって」
<それもユキが望んだ仕事の一つだ。>
進はしばらく話した後電話を切った
「ごめんなさい、長湯しちゃった…」
全く疲れが抜けない状態でユキは上がってきた
「大丈夫か?横になるか?」
進はそう言ったがユキは首を振ると進の横に座った
「お願い、そばにいて…そばに居させて…」
「汗臭いぞ?」
ユキは首を振るとそっと進に寄りかかった
「しっかしすごかったなぁ」
伊藤が大崎と呑んでいた
「あの連中おかしい。絶対におかしい…」
大崎は呆れかえってそう言った
「いくら通信機で連絡取ってるとは言えたったあれだけの情報で
現場に突入するなんて考えられないだろう?」(大崎)
「だから言ったじゃないか、ヤマトのクルーは普通じゃないって
俺が忠告したのにお前が聞かなかっただけじゃないか。」
伊藤がため息まじりに言った
「お前は結局森さんの外見しか見ていなかったって事だよ。」
「真田さん、ユキさんが突入のタイミングを伝えるからその瞬間に
部屋に突入してほしいって。ハンカチを地面にたたきつける、
って。今すぐ準備してください。」
相原が部屋にいるクルーに伝えた
「叩きつける?わかった…」
真田が確認する。それを扉の外で待機してるクルーに伝えられた
「真田さん私も行きます」
進は何も言わずそれだけを言うと飛び出して行った
作品名:yamato… 古代とユキ 7 作家名:kei