yamato… 古代とユキ 7
「いえ、けががなくて本当によかったです。(後ろにいる)SPさんも…。今後また
どこかでお会いするかもしれませんね、その時はどうぞよろしくお願いいたしま
す。お気をつけてお帰りくださいますよう。」
今度は普通のポルトガル語で会話をした。シムは大満足、と言わんばかりにうなず
くとファーストレディの手を取ってチャーター機に乗り込んで行った
そして最終便になった。北アメリカの大統領がファーストレディと一緒にチャーター機
のそばへやってきた。エミリーは今にも泣きそうな顔をしている。そしてユキのそばま
でくると
「ユキさん、ありがとう…弟を返してくれて…あなたとヤマトの乗組員には二度
も救われたわ。本当にありがとう…。弟はあなたと言う人がよく分かったみた
い。ますます惚れ込んだ、って言ってたけど雲の上の人、とも言ってたわ。
幸せになってね。で、いつでもいらして?主人と待っているわ。」
エミリーはそう言うとユキをそっと抱きしめた。フラッシュが一斉にたかれる。エミリー
の後ろには息子のケリーがSPとして立っていてユキに向かって会釈をしたので
ユキも会釈で返した
全てのVIP達が日本を発った。ぞろぞろとマスコミもバラけはじめた。赤いじゅうたん
の片付けも始まった。
「ユキ、戻ろうか」
藤堂と大崎が振り返り建物へ戻ろうとしていたのでユキと相原もそれに続いたが
ユキがふと足を止めて今飛ぼうとしているチャーター便を寂しそうに見ていたので
「どうしたんですか?ユキさん?」
相原も足を止めて聞いた
「来週私は古代くんが乗るヤマトを見送るのかなぁって思うと寂しくなっちゃ
たの…自分が乗ってたヤマトを外から見るのって結構辛いのよ?ほら、
コスモクリーナーを作動させるのにしばらく行ってたでしょ?それもテレビ
のニュースで見てるだけでも辛かったから…あ、古代くんには内緒。
気にしちゃうでしょ?」
ユキは笑顔だったが寂しそうな笑顔だった
「任期は1年だけど時々戻って来た時…ほら、古代と一緒だからちゃんと
連絡取るよう言いますから…」
一生懸命気を使う相原に
「いいのよ、仕事だもん。私も仕事ですれ違っちゃうかもしれないし…」
進はこの軍団の一番後ろにいる
(あのばか、横に来ればいいのに!)
相原は“あ!虫がついてる”と言うとユキの右腕をちょっと叩いた
「痛ったぁい!相原くん?ここすりむいてるところ!」
ユキの声に一番に反応した進が一番後ろからすっ飛んできた
「お、来た来た!はい、ユキさん。古代来たよ!古代もさぁユキさんがいて
心配なら一緒に歩けばいいじゃん?まったく世話焼けるなぁ。
ほら、エアポートでて司令部までちゃんと護衛してよ!」
相原はそう言うと藤堂の後ろに行ってしまった
「あの…バ…」
追いかけようとした進の腕をそっと引っ張ったのはユキで
「ダメ?」
ユキは秘書の顔をしていなかった。森ユキになっていた。そんな顔で
上目遣いで“ダメ?”なんて言われたらダメとは決して誰も言えない
「いや…」
ちょっと困った顔をしながらユキの横をゆっくり歩く進だった
「撮りましたよ!コレ相原さんに売ったら買ってくれるかな?」
本部で新米がユキの上目遣いに顔を赤らめてる進のツーショットをうまく撮ること
が出来たようだった。写真のでき具合を真田が確かめる
「ふむ、いいショットじゃないか。きっと買うぞ?」
「やった!真田さんのお墨付きだ!」
新米は嬉しそうにフォルダーに入れた
一日の立ち仕事が終わって一度司令部に戻ると簡単な会議をして解散となった
ユキは南部のホテルに戻っていた
「終わったらほっとしちゃった。やっぱり最初エアポートでいろいろあったから
最後まで気が抜けなかったわ。」
ソファーに座ったユキが大きく伸びをする
「昨日の主犯格もちゃんと動機とか話してるらしいしひと段落、ってところかな
明日からは出航の準備でまたちょっと慌ただしいかな。でも出発前に一度
休みとろうか。」
ユキの顔がぱっと明るくなる
「え?いいの?どこに行く?」
「いいよ、ユキの行きたいところで。と言ってもまだ何もないと思うけど」
進がそう言うとユキは少し考えて
「三浦でゆっくりしましょうよ。古代くんの小さいころの写真とか見たいわ。
私の写真はフォルダーに入ってるから見せてあげる。あ、私料理でき
ないから…ご飯はどこか食べに行く、でいい?」
「うん、いいよ。そうしよう。」
進はユキの様子を見てもう大丈夫だな、と思った
作品名:yamato… 古代とユキ 7 作家名:kei