yamato… 古代とユキ 7
「ただいま」
「お邪魔します」
二人は休みの日の前日、仕事が終わるとその足でに三浦の地下都市に来ていた。
最初に二人は進の両親の写真の前で手を合わせる
「やっぱりちょっと遠いかな」
進はそう言うとポットに買ってきたビールを冷蔵庫に入れ始めた
「古代くん、食料品買い込みすぎよ、荷物が重いのよ。だから疲れちゃうんだと
思うわ。」
ユキもキッチンに立って買ってきたお惣菜をレンジに入れて温め始めた
「頂きます」
お惣菜をテーブルに並べ二人は向かい合うとビールを片手に食べ始めた
「二人で食べるとおいしいわね。」
ユキが何気なくそう言うと
「そうだね、おいしいね。でもユキと食べるとなんでもおいしく感じるよ」
そう言ってユキにしか向けない笑顔を見せた。
(あんな顔されたらテレちゃうわ)
ユキはシャワーを浴びながら幸せな気分に浸っていた。つい先日起きた事件は
大変なものだったけど改めてヤマトの乗組員の絆の強さを知った。
(みんながいれば何だって乗り越える事が絶対出来る)
シャワー室から出ると進はソファーにもたれかかってうたた寝していた
(私、ゆっくりしすぎちゃったかしら?ごめんなさいね…。)
ユキは奥の部屋からブランケットを持ってきてそっと進にかけ起こさないように
静かに横に座った
(やっぱりちょっと疲れやすかったりするのかしら?一度病院に連れて行った
方がいいのかしら?でも私からは言えないし…でも佐渡先生が今までも
そばにいて何も言わないって事は大丈夫って事かしら?)
ユキは癖っ毛の進の髪をそっとなでた
(あなたは今まで辛い思いをした事を話してくれない…私の事心から信じて
くれていないから?ひょっとしてあなたの心に誰かいるの?)
今まで感じた事のない感情がユキの心を苦しめていた
「なぜ…水田さんたちが…まだ何もしてないのに…」
ユキは端末で議事録をもう一度読み返していた時横でうたた寝してる進の寝言
を聞いて振り返った
(水田?誰?)
「僕らに何ができる?まだ飛べない…兄さん…そこに行って一緒に戦いたい
兄さんは生きて還ってきて…絶対生きて帰ってきて」
ユキは端末で“水田”を調べたするとすぐに女性パイロットでチーフだと言う事
がわかった。そして戦地に赴く前に突如現れたガミラスにやられて戦死した事も
わかった。
「みんな僕を置いて逝ってしまう…僕を置いて…僕が一番行きたかったのに」
今までの苦しみ方と随分違う様子にユキは驚いた。今までは泣きじゃくったり
時には暴れたり苦しみを体で表していたのに今度は自分を殺すような感じだった。
ユキはそっと進の手を取った
「水田さん?苦しかった?」
進はユキを水田と思い話しかけてきた様子だった
「僕もね、水田さんの事好きだった…でも水田さんの気持ちは答えられない。
僕、絶対に水田さんたちの分まで戦います。見ていてください。」
進の力はとても強かった。
(古代くんもこの水田さんの事が好きだった…けど戦う事を選んだのね?)
ユキはそう信じたかった。
「そう…未来は自分で掴むもの…古代くんならきっと大丈夫よ」
ユキも進の手を強く握ると進は安心した様に少しずつ手を握っていた力がほどけていった
しばらくして進の眼が覚めた
「俺、シャワーも浴びないで寝ちゃったんだ。」
「そうよ、汗臭くなっちゃうわよ?」
「やべっ!シャワー浴びてくる!」
進はソファーから飛び跳ねるように降りるとバスタオルを持ってシャワー室に向かった
「…大丈夫そうね…」
ユキは“僕が一番行きたかった”が気になっていた。先日言っていた“生きていて
いいの?”がどうしても引っかかってしまうのだ。
(水田さんは古代くんの事が好きだった…でも古代くんはその気持ちを戦う事を
優先して封印した、ってことかしら?それとも古代くんもその気持ちに応えた
けどやっぱり別れた?って事?…でも応えた…なら…その水田さんは古代
くんの暖かさを知っている…)
ユキは複雑な心境で端末を閉じた
作品名:yamato… 古代とユキ 7 作家名:kei