yamato2 それから 1
「もう、そのぐらいでよかろう?」
父親が初めて口を開いた。母親の動きが止まる
「あなた…」(母)
「これ以上二人を見ていられないよ…進くん…ごめんな。」
父はそう言って進の手を取った
「この手が地球を救ってくれたんだよな。ユキ…済まない。母さんを止めら
れなくて…もう、何も心配しなくていいからゆっくり休みなさい。
(母の腕を取って)ほら、帰ろう。」
半ば強引に連れて帰ろうとする父を母は振り切ろうとしたが父は母の手を離さない。
「ヤマトが全てをひっくり返してくれなかったら地球は植民地でヤマトは
地球に戻れず放浪の旅に出てたかもしれないんだ!娘と息子が無事に
戻ってきた、地球が平和で…子供たちが無事で…これ以上何を望むんだ?」
父はそう言って泣いた。母は黙って聞いていた。
「解ってるはずだよ…ただ、気持ちが付いてこないだけだろう?誰も悪く
ない…。さぁ帰ろう…(二人を振り返って)悪かったね…具合が悪いのに
落ち着いたら食事でもしよう。」
力の抜けた母を支えながら父が言った。
「ママ…私ね、密航したの。古代くんは知らなかったの…私が乗ってる事…
古代くんは危険な旅になるって判ってたから私をヤマトから遠ざけた…
だけどやっぱり私もヤマトのメインクルーっていう誇りがあるから置いて
行かれるの我慢できなかったの。だから、古代くんを責めないで…
責めるなら私を責めて。」
ユキは涙をこらえて訴えた。父はユキの言葉に頷くと母を連れて進の部屋を出て行った
「ユキ、ごめんよ。俺のせいで…ケンカになっちゃって…」(進)
「ううん、いいの。パパがわかってくれてるし…きっとママもわかって
くれるはず…。私は…古代くんがそばにいてくれればそれだけでいいの。」
ユキはそっと進の手を握った。
「暖かい…古代くんの手を握ってるだけで幸せな気持ちになるのよ?何も
望まない…これ以上何も…」(ユキ)
二人でいる、と言う意味が“結婚”という字を越えていた
「結婚式なんてどうでもいいの。真っ赤なバージンロード歩くより豪華な
ドレスより…二人で一緒に生きて行く事の方が大切なの。」
ユキは疲れたのか進の手を握ったまま眠りに落ちた。
「俺じゃなければユキはもっと幸せになれただろうな…ごめんよ。」
進もユキの寝顔を見ながらいつの間にか眠りに落ちていた。
「古代、起きてるか?」
ノックの音で進が眼を覚ました。
「あぁ、入れよ」
相原が入ってきた。
「なぁんだ、結局一緒の部屋じゃないですか。」
相原がブランケットにくるまるように眠るユキを見て言った。
「まぁ、ユキは軽傷みたいだから…個室もらうほどじゃない、って言って…」(進)
「そうですか。実はさっきICUに様子を見に行ったら南部が、目覚めたんですよ。」(相原)
「本当か?」(進)
「えぇ、起きてぼんやりしてる感じでしたが…多分しばらくしたらこっちに
移ってくると思いますよ。一応報告まで!」
相原はそう言うと“みんなに報告しなきゃ”と言いながら進の部屋を出て行った。
(そうか…よかった。ご両親も喜んでいるだろう。しかし…)
進は南部の意識が戻ってほっとしたが島の意識が戻らないのが気になっていた。
作品名:yamato2 それから 1 作家名:kei