yamato2 それから 1
しばらくするとユキが進の部屋に車いすで戻ってきた。
「どうしてもこの部屋に戻りたい…って。いいですか?」
看護士は進に同意を求めた。進はユキの母が来るであろうことを思い出してどっちの部屋にいたらいいのかわからなかったがユキを安心させるためにも一緒の部屋にいた方がいいと判断した。
「えぇ、こちらで大丈夫です…ユキの荷物、こっちに移動してください。」
「古代くん…」
ユキは驚いた顔で進を見た。
「多分、ユキはおおきなケガしてなさそうだからきっと貧血が落ち着けば
大丈夫、だろうと思ってね…ひとつ部屋が空けば…誰かが入れるだろうし…」
進は島か南部が意識を取り戻したとき自分の部屋の近くに来てほしいと思った。
「えぇ、そうなんです…大きなケガはなく貧血と低血圧くらいなので少し
休んでもらえば大丈夫、との事です。」
看護士はそう言ってユキの顔を見て笑った。恐らくユキが検査前からずっとそう言い続けていたのだろう…
「ただ、骨密度が低いので気を付けるよう古代さんからも言ってください。
急な動きをした時に骨折してしまうかもしれません。宇宙にいた時間が
長いからかそこはわかりませんが…以前はヒビで済んでますが一応用心し
ておいてください。」
看護士はそう言うと“荷物取ってきますね”と言って進の部屋から出て行った。
「ユキ、今日、お母さんが来るらしいよ。」
ユキはベッドに大人しく寝ていたが飛び起きそうになったので
「ほら、そうやって急に動かない…骨折するぞ?」(進)
ユキは進と同部屋にしてもらったことを後悔したが
「…いいんだ。ちゃんと説明するから…大丈夫だよ。」
進がやけに落ち着いているのでヘンだなぁとユキは思ったが
「本当?私連れて帰られちゃったりしない?」
と、ユキの問いに
「大丈夫だよ…それに…俺もユキと一緒にいたいんだ。」
そう言って進は眼を閉じた
「森です」
ユキの母親の声がノックと同時にした。進はユキの顔を一度見て
「どうぞ」
と短く返事をした。怒った顔の母親と困った顔の父親が縦に並んで立っていた。
「古代くん、今回はどういうつもりでユキを連れて行ったの?」
母は進が椅子をすすめたのに座らず立って話をしていた。ユキが思わず“勝手に付いて行ったの”と言おうと思ったが進のオーラがそれを制していた。
「以前の戦いより酷かったって…長官も言ってらしたわ。もしもの事が…
ないとは言い切れなかったんじゃないの?」
進は何も言わず聞いていた。
「結婚式だって…結局ユキ任せで…南部さんが相談に乗ってくれていたのに
キャンセルだなんて…どう責任を取るつもりなの?」
母の後ろで父が謝るような仕草をしている。
「ママ、古代くんを責めないで!」
ユキがガマンできず半分叫ぶように声を上げた
「ユキ、いいんだ。…森さん、すみません。全て私の責任です。今更何も
弁解する気もありません。だけど今回の戦いでまたユキに助けられました。
ユキもヤマトのメインクルーです。置いて行くわけに行きません。」
ユキは驚いた表情で進を見た。
「ユキはね、女なのよ?それなのにそんな過酷な戦いに…もう、見ていられ
ないわ。お願いだから婚約破棄させてちょうだい。最初から私の言った
通りにしておけばユキだってこんな辛い戦いに行かなくても済んだはずよ
普通の女性として幸せにして見せるわ。」
「ママ!ひどい…古代くんの気持ち、何もわかってない!私だけが辛い
戦いを経験したわけじゃないわ!古代くんはもっと…辛い思いをしてる。
誰かが支えないと…」
ユキが進をかばおうとすると
「それはユキじゃなくてもできるわ。たくさんお友達がいるでしょう?
さ、ユキ…支度して…自宅で養生すればいいわ。帰るわよ!」
母親は進のベッドサイドからユキのベッドへ移動して左手首を掴んだ
「痛い!」
ユキが母の手を振り払った。
「大げさね…ほら、帰るわよ。」
ユキの母がそう言った時
「ユキの体は骨密度が低く骨折しやすくなっています。急な動きに気を付け
なくてはいけないんです。ケガは軽いのですがケアが必要なんです。
もう少し、ユキに優しくしてくれませんか?」
進がそう言うと
「宇宙に出なければ骨密度だって低くならないはずよ。全部ヤマトのせいだわ
大人しく長官の秘書だけしてればいいのよ。さあ、ユキ、行くわよ。」
母は先ほど隣の部屋から運んだばかりのユキの荷物をまとめ始めた
作品名:yamato2 それから 1 作家名:kei