yamato2 それから 1
その日の午後ストレッチャーを押す音が聞こえてきて進の部屋の先で止まった。
「南部くん、ICU出てきたのね。」(ユキ)
「あぁ…そうみたいだな。」
進はそう言いながらじっと扉を見つめていた。
「ユキ…車いす…」(進)
「はい。」
ユキはゆっくりとベッドを下りると用意されている車いすを進のベッドの横に付けた。
「イテテ…ベッドから車いすに移動するのもコツがいるんだな。」(進)
「慣れるまで大変そうね。さぁいい?行くわよ。」(ユキ)
進がしっかり座ったのを確認すると南部の部屋に向かった。
ノックをしたが返事がないので
「南部、入るぞ」
と進が声を掛けて南部の病室に入った。南部は一人でベッドに寝ていたが“無気力”状態で背もたれを少し起こした状態で窓の外を眺めていた。
「南部…」
「南部くん…」
二人がそろって声を掛けるとゆっくり声のする方を見た。
「判るか?南部…ちゃんと聞こえてるか?」
ユキが車いすを押しながら二人は南部のベッドの横に立った。
「…古代とユキさん…二人ともご無事で…よかったです。」
いつもの南部らしくないセリフの棒読み状態だった
「南部くんどうしたの?」
ユキがブランケットを掛けなおしながら聞いた。
「俺…助かったんですね。」
南部は進たちから視線を変えて再び窓の外を見た。
「ここは高すぎて地上が見えない…古代…俺たちは、勝ったのか?」
進はこれだけの重傷を負いながら地球の心配をする南部に何も言えずにいると
「…私たちは…一度負けを覚悟したわ…だけどテレサさんが最後立ち上がっ
てくれて…地球は勝ったんじゃないわ…救われたの。」
ユキが進にも言い聞かせるように言った。
「テレサさん、ってあの?生きてたのか?」
南部が少し背を起こしてユキに聞いた
「そう…テレザートを脱出して…ヤマトに追いついてきたの。その時島くんを
連れてきてくれて…島くんを救って…ズォーダーとの戦いは私が行きます
とそう言って…私たちはテレサさんに救われたの。辛い戦いだったけど
最後、テレサさんは島くんにだけ開いてくれた心を私たちにも開いて
くれたわ。地球に戻ってきて…長官がありのまま、この戦いの全てを
地球市民に伝えたそうよ。」
ユキがそっと南部の手を握って
「私たちはまた女神に救ってもらえた…イスカンダルのスターシアさん、
サーシアさん…そしてテレサさん…。彼女たちは迷わず救いの手を
伸ばしてくれたわ。私たちはそれに答えないと…。」
ユキは南部の顔を見てにっこり笑った。
「辛い戦いだったけど…たくさんの仲間を失ったけど私たちは生きてる…
今は体を治すことだけを考えて…一緒に乗り越えて行きましょう。
とても重い試練だけど…みんながいるわ。きっと乗り越えらえる…。」
南部はじっとユキの眼を見つめた。ユキはぎゅっと南部の手を握ると頷いて
「男同士の話もあるでしょう?私隣で待ってるから…話が済んだら壁を叩い
て知らせて。そしたら古代くんを迎えに行くわ。ここ、防音ばっちりだけ
ど音は響くから大丈夫よ。」
ユキはそっと南部の手を放すと“じゃぁ”と言って南部の部屋を出て行った
作品名:yamato2 それから 1 作家名:kei