yamato2 それから 1
進はそっとユキの隣に来て手を握った。
「ありがとう。」
小さな声だった。消えそうなくらいの小さな声だった。ユキは黙って首を振った。
「古代!」
知らせを受けた中央病院の職員が佐渡と共にストレッチャーを押しながら第一艦橋へ入ってきた。
「佐渡先生…島をお願いします。」
職員は手際よく島をストレッチャーに移した。
「バカモン、お前たちも行くぞ!下で長官が待っとるわい!」
佐渡が怒鳴るようにそう伝えると
「早ようせい!島を病院に送るんじゃ、荷物は後から送るようにしても
いいじゃろ!」
進とユキは顔を見合わせて一緒にエレベーターに乗り込んだ。
下に降りると藤堂が待っていた。進は敬礼して
「ヤマト…帰還しました。」
と伝えた。ユキも一歩下がったところで敬礼する。
「うむ…取り敢えず先に島と一緒に中央病院へ行きなさい。私の話は後だ。」
島はすでに救急車に乗り込んで佐渡が様子をチェックしていた。進とユキは敬礼を解くと急いで救急車に乗り込んだ。
「なぜ島がヤマトに…」
佐渡が進に聞いた。
「実は、全員下艦した後テレサが島を運んできました…テレサは自分の血液
のほとんどを島に…」(進)
「じゃぁ島の体の中には地球生命体外の血液が流れている、って事か?
それなのに…こうして生きてる…」
佐渡は信じられない、と言うように島の顔を見た。
救急車はすぐ中央病院に着いた。島はすぐに集中治療室へ運ばれ進とユキも診察室に連れて行かれた。
「大丈夫です、って。どこも痛くないです!」
進は診察室でベッドに寝かされるのを必死に抵抗していたが
「進くん、大人しく横になりなさい…佐渡先生からカルテは預かっている。
とてもじゃないが普通の人間じゃボルトが入るぐらいの大けがだぞ?
ケガの部位が炎症起こしてそこに細菌が入ってその部分が壊死する可能性
だってあるんだ。患部を切断、なんて事になったらどうする?」
聞き覚えのある声だった。進は上半身を起こしたまま声のする方を見た
「モリタ先生…」
被ばくした進の主治医がそこに立っていた。
「ほら、大人しくして…基本は内科がだが…今全員でヤマトの乗組員を診てる
から…一応内臓がやられてないかエコーで診ようか。」
モリタの声で看護師がエコーの機械をセッティングし始めた。
「ははは、やっと大人しくなったね。久しぶりじゃないか。森さんも無事かい?」
あのころと変わらない優しい笑顔に進はほっとしたのか目の前が真っ暗になった。驚く看護師を制して
「大丈夫だよ、安心したんだよ…。ちょうどいい、このまま検査をしましょう。
まず最初に…」
モリタは手際よく検査を進めて行った
「ユキ…こっちよ。」
元同僚が診察室に手招きする。
「ずいぶん痩せたわね…。顔色悪いわ…食事も取らなかったんでしょう?
ちょっと失礼?(眼のふちを見て)貧血も酷そうね…そこのベッドに横に
なって。ごめんね、先生来る前に先に採血だけさせて。今先生全部出払って
いて…最初に戻ってきた先生に診てもらうから…。」
ユキは言われるままにベッドに横になった。左腕を冷たい感触が走る
「ちょっとチクっとするわよ。」
ゴムで腕を縛った後針の入った感じがしたあとスーっと寒気がした。
「気分悪そうね…普通の半分だけ、取らせてね。」
同僚がそういったがユキはその言葉の半分も聞き取れないまま眠るように気を失った
作品名:yamato2 それから 1 作家名:kei