yamato2 それから 1
「私たちは地球で家族が幸せに暮らせるよう、それを願って戦いました。
これからも…同じです。」
進はじっと藤堂を見た。
「古代…」
「お願いします。それに長官がいなくなったら…ユキ、失業しちゃいます」
進は笑いながらそう言うと
「いや、ユキは引く手数多、だよ。実は大統領からもオファーがあるくら
いでな…“藤堂君、いつになったら森さんを解放するのかね?”って
顔を見る度に言われるんだ。大統領には28歳になる息子さんがいてね…
恐らく…古代のご想像通りだ。お見合いを断るのも私の仕事なんだよ。」
藤堂が笑いながら進に話す。
「早く結婚してしまえばいいのかもしれないが…まさかの事態になって
しまって…」
「はい…だけどこれで私が今までどれだけユキに甘えてきたかがよく判り
ました。そして私がどれだけユキに助けられてきたか…も…。
もう…決して離れてはいけない、と決めました。」
進の言葉に藤堂が笑った。
「ははは、そうか…よかった…。実はユキに伝えたんだ。“古代から
離れるな、ヤマトを下りると言うまで離れてはいけない”とね。彼女は
私の指令を忠実に守ったんだね。本当によくできた秘書だ…。随分危険な
業務命令を下してしまったと後悔しているが…そのおかげで古代も無事
戻ってこれた。これからは防衛軍をよくするためにもキミ達の力が必要
になるだろう。死んで行ったクルーの為にも…自慢できる地球にしよう。」
進は藤堂の言葉にうなずいた。
進と藤堂はしばらくこの航海の話をした。
「進くん」
ノックと同時にユキの父親が進の病室に入ってきた。
「あ、すみません、こんな格好で…」
進が上半身起こそうとしたが
「ひどいけがをしてると新聞で見たよ。無理しなくていい…そのままで
いいから…」
ユキの父親はそう言いながらベッドサイドにある椅子に座った。そして進の横にあるベッドを見て
「昨日、ユキはここにいたのかい?」
と聞いてきた。
「はい、すみません…起きたらユキが寝ていました。朝から検査との事で
出て行ったっきり戻って来ていません。…それより…ユキを危険な航海に
連れて行ってしまって申し訳ございませんでした。」
進は父親の顔を見て謝った。父親は自分を怒るために来た、と思ったのだ。
「いや、ユキが勝手に付いて行ったんだろう?大体の事はわかる…
ユキから結婚式のキャンセルのメールが入ってて…理由もなくただ
“今は古代くんに付いていないとダメなの”ってね。あの子は自分が
信じた事は絶対に最後まで信じる子なんだ。母さんはその辺りまだ
わからないみたいだが…」
父親は笑っていた。
「この若さでそこまで信じられる人と出会える、という事はすごい事だと
私は思っている。だからキミの事責めたりしない。だが、妻は違う。
きっとキミを攻め立てるだろう。妻は君がユキを連れて行ったと思って
いる。一度そう思い込むと誰が何とっても聞く耳を持たない性格で…
その辺りはユキと似てるような気がするんだが…(苦笑いする)まぁ
今日、病院に行く、と言ってたから先に伝えておこうと思ってな…私も
一緒かもしれんが…これもユキと一緒になるための試練だと思って耐え
てくれな(笑)子供の幸せを願わない親はいない…妻は妻なりに一生懸命
なんだよ。」
そう言いながら父親は立ち上がり“仕事の途中で寄ったんだ”と付け加えると
「私がここに来た事は二人に内緒で、な。」
と言って帰って行った
進は一気に現実に戻された気がした。結婚式をキャンセルした、という事を思い出したのだ。
(南部のお父さんに頼んだんだよな…いい式場を用意してくれて…全部
ユキに任せていたから…)
一番楽しみにしていたユキにキャンセルの連絡をさせた事を今更ながら後悔した
作品名:yamato2 それから 1 作家名:kei