yamato2 それから 2
<ユキさん…体調すぐれないみたいね…無理しないで。彼が心配してるわ>
テレサが夢の中に出てきた。
「テレサさん、島くん…」
ユキは島の様子を伝えたかったが
<えぇ…わかっています。多分島さんは自分が助かったことが信じられな
いのでしょう。いいんです、私の事は…私が覚えていますから…>
テレサは嬉しそうだった。自分の身を顧みず島を助けたのに島がそれを覚えていない…それなのに最期にあった時より幸せそうに見えた
「それで…いいの?」
ユキは自分が寂しくなってそう聞いてしまった
<ユキさんは彼に何かを求めた事ありますか?>
ユキは突然自分の事を聞かれて驚いてしまった
<多分、何も求めていない…ユキさんが彼に求めてるのは彼自身…だけど
彼は多くの事をあなたに求めています。それは恋人としてのユキさんの
時もあったり母であったり…あなたの中に“家族”を求めてます。
私は…島さんの身体の中で生きてる…もうそれだけで充分なんです。
私はユキさんと同じ…そばにいるだけで充分なんです。>
テレサの瞳に涙はなかった。
<ユキさん、島さんを見守ってください。>
ユキはいつの間にか泣いていた。
<そして時々私を思い出して…そしてユキさんの知ってる島さんの話を
してください…>
テレサの後ろにぼんやりとテレザリアムが現れた
「待って…私を連れて行って」
ユキがテレサの後を追いかけようとするが体が動かない
<ありがとう、ユキさん。あなたは勇気のある女性です。あなたの勇気ある
行動が未来を切り開いていくでしょう…>
テレサがそうユキに伝えるとテレサはテレザリアムに吸い込まれるように消えて行った
「ユキ?どうした?」
目覚めたユキは涙を流していた。心配そうに進がユキの顔を覗きこんでいた。
「テレサさんが夢に出てきたわ…とても幸せそうだった…最期に会った
時より幸せそうだった…辛い恋をしたのに…島くんの傍にいられるだけ
でいいの、って…。」
南部も少し離れたところで聞いていた。
「せめてもう少し一緒にいたくてテレザリアムに行こうとするんだけど
身体が動かないの。」
ユキの瞳から涙がどんどんあふれ出てくる
「ねぇユキ…少し様子をみよう。島も異常がなければここへ来るだろう?
(ユキが頷く)大丈夫…島には俺たちが付いてる。」
進がそう言うと南部がベッドの上で頷いていた。
「…古代くん、南部くんと同じ事言う…」
「そうか?(南部の方を見てお互い笑いあう)まぁ…島だもんな。
さて…ユキ、そろそろ部屋に戻ろう。点滴やらないとダメな時間だろう?
南部、悪かったな。…ユキ、歩けるか?(ソファーから立ち上がり一歩
足を出して頷く)大丈夫そうだな…じゃぁな南部。お大事に…」
進の車いすをユキが押すように南部の部屋を出て行った。
「全く…どちらも無理ばかりするんだから…」
南部はそう言うと起きてる時間が長かったのか睡魔に勝てず深い眠りに落ちた
「ユキ、大丈夫か?」
隣の部屋に入ると進が聞いた。
「えぇ、大丈夫よ。車いす押すと自分の体重も預けられて歩きやすかったわ
ごめんなさいね…心配かけちゃった?」
隣合わせのベッドにお互い横になった。
「心配も何も…とにかく…じっとして自分の身体の調子整えましょう。」
進が学校の先生のような口調で言った
「はぁい」
ユキはバツ悪そうにブランケットを顔半分まで被って返事をした
作品名:yamato2 それから 2 作家名:kei