yamato2 それから 3
「テレサ…」
島は右手を見ながらつぶやいた。
「ねぇ島くんが目覚めた時…そうやって右手が動いたわ。」
島が振り返ってユキを見た。
「私の心にテレサさんがやってくるの。島くんと同じね…とても暖かい
気持ちになるわ。多分、その暖かい気持ちは島くんを想う気持ちから
来てると思うの…。テレサさんも幸せなのよ…テレサさんは島くんの中で
生きている…“島さんとあの美しい地球で暮らすことができる”ってとても
嬉しそうに話していたわ。」
ユキはそっと島の手を握ると
「だから…生きて!島くんは自分一人の身体じゃない…テレサさんの魂と
一緒に生きるの。今の島くんを見てテレサさんは喜ばないわ。島くんが
幸せにならないとテレサさんも幸せになれない…」
ユキもいつの間にか涙を流していた。同じ女性として辛い選択を選ばなくてはいけなかったテレサを思うと自然と涙が出てきてしまった
「ユキ…」
島はユキの手を握り返すと
「ありがとう、ユキ…。」
そう言って自分の涙を拭いた
「なぁユキ?」(島)
「なぁに?島くん?」
ユキは古代の時と同じように小首をかしげて島を見た。
(キミは変わらないな…出会った当時のままだ。俺と古代は一目ぼれ
だったんだよな…)
そんなことを思い出しながら島は話を続けた
「ユキはこのままでいいのか?古代との事…」(島)
「…えぇ…多分、私たちの幸せは私たちにしかわからない…私たちはこの
戦いで“一緒にいる”意味を初めて理解した気がするの。それは物理的な
ことじゃなくて…実際古代くんは私がヤマトにいても遠くにいたわ…私の
事なんて何もわかっていなかったのよ。まぁ古代くんに分かれ、って言って
も無理だと思うけど…」
島は何となくわかってウンウン、と頷いた。
「けど…多分わかってくれたと思う…だからもういいの、結婚なんて小さな
事よ…」
ユキは本当だったら指輪が付いているはずの左手の薬指を触りながらつぶやくように言った。
「私たちにはやらなくてはいけない事がたくさんあるの。いい?島くん私
今、“私たち”って言ったの…お願い…一緒に…」
ユキが瞳に涙をいっぱい浮かべて島を見る。一度涙を流すと止めどなく女性が泣くことぐらい島も知っている。だけどユキは必死になって泣かないように頑張っている…島はそれがわかって苦笑いすると
「ユキにお願いされたら断れないよな…」
そう言って立ち上がり沖田の足元へ来た。ユキも心配そうに後ろを歩く
「大丈夫…昨日、少し古代とも話したんだ…。心配かけてごめんな…
っと、そうだ、俺からユキに一言…」
島は振り返りながらユキを見て
「絶対古代の前以外で泣くなよ?誰もが抱きしめて慰めたくなっちまうからな?」
そう言って笑った。ユキは島が笑っているのが嬉しくて我慢していた涙がポロっと落ちた。
「ほら、泣くなって!」(島)
「違うわ、これはうれし泣き…島くんが笑ってるんですもの…島くんが…」
ユキが泣き崩れるとそっと島が抱きしめて
「ユキ、ありがとう…今だけ古代の代わり…な?」
ユキはそっと頷いた
(私も今、テレサさんの代わりよ…)
そう思いながら……
作品名:yamato2 それから 3 作家名:kei