yamato2 それから 3
進はゆっくり話し始めた
「加藤と…山本は…死んだ。」
恐らくそうだろうと思っていた島だったが実際進から聞くとやはりショックを隠せなかった。
「白色彗星のガス帯を取り払った後…俺たちは内部爆破に向けてコスモタイガー
に乗り込み艦載機の射出口へ向けて飛んだ…相手の射出口の開け閉めが
とても速く普通に入ることなどできなかった。だから射出口を爆破して
入ろうと思ったが敵艦載機がしっかりそこを守って爆破できないでいた。
その時だった…山本が…俺を庇って被弾して…そのまま敵の艦載機の射出口
へ飛び込んで行ったんだ…あいつ、俺に敬礼して…」
進は涙を我慢することができなかった。島に背中をポンポンと叩かれながら話を続けた
「俺は…真田さんと斉藤と一緒に中にもぐりこんだ。途中真田さんが負傷し
てしまったが俺と斉藤が都市帝国の中心に入り込むことができた。そこは
動力炉で…丸いドームの中心に動力炉があってそこへ向かって一本の
橋が伸びていた。その橋を渡ったらもう、戻れない、そんな橋だった。
そこで斉藤が“援護してくれ、俺が向こうに付いたら俺に帰れ、”と言ったんだ。
そう言うと斉藤は走ってその橋を渡った…俺は…斉藤に背を向けて走った
真田さんを途中でかかえて艦載機の射出口へ向かった。
戻った俺たちを待っててくれたのは加藤だった。コスモタイガーも一機しか
残ってなくて…加藤が守っていたタイガーも飛べてるのが不思議なぐらい
だった…。俺は真田さんを乗せると加藤にタイガーを出すよう指示した…
だけどヤマトに戻ってきて…操縦席を見たら…あいつ…息絶えてたんだよ
今操縦してたじゃねぇか、ってそう言いたかった。だけど…あいつの顔を
みたらそんな事言えなかった。あいつ、笑ってたんだ。辛いだろうに…
笑顔だったんだよ。」
進はポケットからお揃いの宇宙羅針盤を取り出した。
「…ヤマトを降りるとき…外したんだ。あいつ…冷たかった。笑ってるの
に冷たいんだよ…加藤と山本…一生一緒に飛んでくれると思ったのに
俺は…俺は…」
進はそう言うと次の言葉が出てこなかった。
「古代…思い出させて悪かった…でも俺にとっても最高の仲間だ…最期を
知る権利あるだろう?俺たちは一緒に戦おう、って予備生の時から話して
いた…それが現実になって…こんなにうれしい事はなかった。」
進が頷く
「全員が退院したら…みんなで英雄の丘に行こう…」
島の言葉に進は頷くことしかできなかった。
翌日、ユキは退院許可が出たが簡易ベッドをそのまま置いてもらって進の部屋にずっといた。南部も転院許可が出て南部病院に移って行った。
比較的ケガの軽かったクルーの退院も出始め復興に向けて明るい兆しが見えてきていた。
進もギブスが取れて足が自由になった。個室を出て一般病棟に移りたいところだが“艦長代理”と言う肩書で個室(VIPルーム)に居させられた。
「真田さんが相部屋なんですよ?俺も相部屋で…」
と進は言っていたが周りがそういうわけに行かず…長官命令で退院するまで個室、となってしまった。でも個室のおかげで訓練内容をメインクルーだけで組み立てるのに古代の部屋を使うことができたのでそれはそれで重宝していた。
「じゃぁ地上訓練は全くなしでいきなり飛ぶんですか?」
相原が確認するように聞くと
「あぁ、多分誰もが地上訓練の後飛ぶと思ってるだろう…でもそれじゃ
甘ちゃん教育だ。実戦で学ばせないと絶対イザという時使えないぞ。」
真田の厳しい意見が飛ぶ。
「新しい戦艦のオペレーションしかしたことない、となるとセミオートと
手動型のヤマトを動かすとなるとそれなりに危険が伴う…しかしヤマトも
新しいクルーを入れなくてはいけない。緊急時にどれだけ対応できるか、
を考えたら強行スケジュールで行くべきだ。」
進は真田の意見に頷いた。
「今回…やはり島の抜けた穴が一番痛かった…古代も太田も操縦できるが
戦闘空域を飛ぶ、という事はそれなりの腕が必要だ。ヤマトがなぜ強いのか
それは動かす人間によって魂があるからだ、と俺は思う。俺がこういうと
ヘンに思われるかもしれないがヤマトは鉄クズだった。寄せ集めで急造
された艦だ。あの地球より数段も格上のガミラスに勝利したのはクルーの
おかげだと俺は思ってる。それと同じメンツを揃えるのは無理だろうが
それなりの人材を育てたいと思っている。」
真田が当時を思い出して熱く語った
作品名:yamato2 それから 3 作家名:kei