yamato2 それから 4
「ごめんなさい…」
二人はユキの実家からステーションに向かって歩いていた。
「ユキが謝る事じゃないよ。結婚式をドタキャンした男が話を聞いてもら
えるだけありがたいと思え、って言われちゃうよ。普通なら玄関通しても
らえないと思うから…」
進が柔らかく笑った。
「実はお父さんに口止めされてたんだけど…地球に戻った次の日、会いに来て
くれたんだ。その時お母さんが夕方来ること、自分が一緒に行けるかわから
ない事…一緒に来てくれてホッとしたけどね。その時ヤマトの航海の重要性
をちゃんとわかってくれて…」(進)
「そうだったの?…あ、私が検査の日…」(ユキ)
「だから、お父さんに甘えてばかりじゃだめだと思ってちゃんと挨拶しないと
って思ったんだ。まぁ…予想通りだったけど…。」
ユキは自分の気付かないところで進がいろいろ考えていてくれることが嬉しかった
「ありがとう…」
ユキはそっと進の手に自分の手を添えた
「これからどうする?」
ステーションに近くなってきてユキが尋ねた
「英雄の丘へ行く?帰って来て病院直行だったから挨拶していないでしょ?」
ユキは先日島と行ったので挨拶済ませていたが進がまだだったのを思い出してそう聞くと
「あぁ、いいかい?」(進)
「当然でしょ?…向こうでお花買いましょう。」(ユキ)
「沖田艦長…」
進は沖田の銅像を見上げた。沖田の足元には新しいレリーフの工事が始まっていて進は複雑な心境だった。ユキも進の気持ちが痛い程わかったので何も言えずそっと花束を添えた。
「すみません…大切な仲間を守れませんでした…」
そう言って静かに涙を流す進を見つめるユキ…
(沖田艦長、古代くんを守ってあげてください心が折れないよう支えてあげて
ください。)
ユキはそう心の中で祈った。進は何も言わずじっと沖田を見つめている。ユキは進を一人にしてあげようと思い少し離れてイスカンダルの時戦死したクルーのレリーフを一人ずつ話しかけるように見て回ることにした。
(この前島くんと来たけど…その時の事、古代くんには内緒ね?そちらに
たくさんのクルーが行ってしまって古代くんが寂しがっているわ。
私も寂しいけど…まだそっちには行けないみたい…)
レリーフの顔は誰一人忘れられる人はいない。みんな必死に地球の為に戦った…
ユキは藪のレリーフの前で止まった
(怖い思いしたけど…全て過去の事と思えるようになりました。過酷な戦闘が
続くなか、機関室を守ってくれてありがとう。徳川機関長がそちらに向か
いました。ちゃんと謝ってね。私は大丈夫…)
藪と一緒にいたクルーはここに一緒に並んでいる…ユキは同じ思いで黙とうを捧げた。以前は藪達のレリーフの前は辛くて避けていた、が、機関室を守って亡くなって逝ったクルーを思い出すと藪達も同じところで頑張っていたんだ、と考え直した。
辺りは暗くなり照明が足元を照らしていた
進は長い間沖田の像を見上げていた。ふとユキが一緒だったことを思い出してユキを探したがどこにもいなかった…がコツコツと石畳を歩く音がして振り返るとユキがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「ユキ…」
「少し肌寒いでしょう?下に行ってコーヒー買って来たの…古代くんは
紅茶よ。レモンがなくて…ミルクティーだけどいい?」
ユキはそう言って紙袋に入った紅茶を手渡した。触れた手が冷たい。進はユキの手ごと包んだ
「ごめん、冷えちゃったね。」(進)
進の手は暖かかった。
「うん、古代くんに暖めてもらうために冷えたのよ。」
ユキがそう言うと進はユキの手から紅茶を受け取ってベンチに置くとそのままユキを抱きしめた。
「古代くん、紅茶が冷め…」
ユキが言い終わらないうちにユキの唇は進に塞がれた
「ただいま」
「お邪魔します」
二人は自然と三浦の地下都市に足が向いていた。両親の写真に手を合わせると
「二人そろって帰って来れました」
と進が報告した。二人の手はしっかり繋がれている
「ユキ…」
進はユキの名前を呼ぶとギュッと抱きしめて首筋に熱いキスをした
作品名:yamato2 それから 4 作家名:kei