yamato2 それから 4
「加藤が…そんな事を…」
進はいつも危ない思いをさせているとそう思っていた。艦載機を送り出すと100%全機戻って来れるという保証はない。ただ進の心の中にチーフの艦載機を生かした戦いを、という言葉がいつもあった。
「あいつ、飛ぶの好きだったからな…」
島がしみじみつぶやいた
「古代くん、ちょっといい?」
ヤマトの話が終わって島の部屋で適当にくつろいでいると相原が声を掛けてきた
「あぁ、どうした?」(進)
「山本くんの事で伝えておきたいことがあるんだ。」(相原)
「山本?」(進)
「うん、山本くんね…前にさ話す機会があって…僕もそうだけど…イスカンダル
の往路で二人とも古代くんに助けてもらってるんだ。その話をしてる時
山本くんが“何があっても古代は俺が守る”って言ってた。僕の所って
全員の通信記録が残るようになってるんだけど…“相原、古代に伝えて
くれ、あの時諦めないで呼んでくれてありがとう、俺はこの為に生きた
んだ、後を頼む。ユキさんと…”…って。そこで切れちゃって…僕は
何度も叫んだ…だけど…」
相原は涙を流しながら進に伝えた
「相原、ありがとう。相原の所はそういう意味で酷な所だよな…だけど
強くなったな。…山本は…俺を庇って被弾して…そのまま敵の射出口へ…」
進もいつの間にか涙が流れていた。
「加藤は…加藤は何も言ってなかったか?」(進)
「加藤くんは苦しい息遣いだけが聞こえていた。ただコスモタイガー発進
って聞こえて来て…古代くんと負傷した真田さんが乗ってるって…それ
だけを伝えて…後は無言だった。辛そうだけど加藤くんは無事帰ってくる、
って信じてた…まさか…帰ってきたのに…」
相原の涙は止まらない。
「相原…俺たちは加藤と山本に負けない仕事をしないといけないな。」
進はそう言うと相原の肩をがっちりつかんだ。
「守ってもらった命だ…大切にしないと…」
相原はただ頷くことしかできなかった
進とユキはすでに任務に就いていた…が、パトロール艇の仕事ははまだ機能していなかった。それより先に地球と月の間の戦闘の残骸をどかす作業と遺体の収容が最優先となっていた。進も救命艇に乗り込み乗組員の捜索活動に率先して参加していた。
宇宙空間に漂う仲間を見るとそのたびに涙が流れた。進は山本を探していた。
(あいつ、もしかしたら脱出ポットを使ったかもしれない)
そう思いながら捜索活動に従事していた。捜索しているとヤマトの乗組員だけでなく都市帝国の乗組員も多数見つかった。都市帝国の乗組員は一度月面に並べてカプセルに入れられて宇宙空間に流した。
ヤマトの乗組員はその都度地球に送られ引き渡しがあると進は捜索活動を休んで遺体に付き添った。宇宙空間に漂う遺体のほとんどはコスモタイガーの隊員と戦闘班だった。
進は亡くなった状況を涙をこらえて説明した。
それは藤堂も付き添いユキも一緒だった。
ヤマトの乗組員は“ヤマトで殉職した”という事になった。藤堂は引き渡しの時進の説明の後それを告げた。ユキはその後の事務処理…退職金の話をしなくてはいけなかった。辛い仕事だったが遺族が誰も罵ったりせずむしろ長官にお礼を言って進とユキにも感謝の言葉を掛けて帰って行った。
作品名:yamato2 それから 4 作家名:kei