yamato2 それから 4
「加藤です」
憔悴しきった母と松葉つえを付いた兄が加藤の遺体を引き取りに来た。進とユキが姿勢を正す。
「加藤を…連れて帰れず…すみませんでした…」
進が頭を下げると藤堂とユキも頭を下げた。そして加藤が亡くなった経緯をはなした。すると母が突然
「古代艦長代理は三郎が予備生の時から一緒だった古代くんかしら?」
と声を掛けてきた。進が“はい”と答える。
「…そう…今までありがとう。なんてお礼を言ったらいいか…三郎は予備生の
時からメールをよく入れてくれました。山本くん、古代くん、島くん、
相原くん…何度も名前が出てきました。あの子は幸せでした…いい仲間に
逢えて本当によかった、と…。5人の写真があって…随分幼い写真だけど
あなたの顔はテレビで拝見した事もあって…すぐに分かったわ。」
加藤の家は父親は居ず4人の男兄弟だった。一番上の兄は進の兄、守と同期だったがガミラスとの戦いで行方不明になっていた。次男は負傷して軍に籍を残しているがまだ復職できないでいた。
「加藤が…」
ユキはたまらず後ろを向いて涙を拭いている
「えぇ…帰ってくるとあなたと山本くんの話ばかりで…二郎が話を聞いて
あげるんだけど三郎が帰った後“いいなぁ”って…」(母)
「私のけがは艦載機に乗り込んで、のけがではありません。兄も戦艦が大破
して命を落としました。三郎は飛ぶのが好きでした。古代さんんの下で
飛べて…そりゃあ幸せそうでしたよ。上に立つ者の考え方ひとつで出撃の
回数も違ってくる…古代さん、ありがとう…今一番下の四郎が訓練生です。
ひょっとしたらお世話になるかもしれません。その時は厳しくご指導
願います。」
加藤の兄、二郎が右手を出した。進は素直に右手を出した。進は耐え切れず涙が溢れてきた。
「あいつ…俺がいなかったら生きて帰れたかもしれないのに…俺がいたから
俺のせいで…」
進はその場に泣き崩れたユキもそれを聞いて泣き崩れてしまった。藤堂がユキを支える
「古代さんのせいじゃないですよ。あいつの判断です。俺はあいつの判断は
正しいと思っています。同じ状況だったら誰もがあなたを守ります。
三郎はよく言ってました。“ヤマトと古代がいれば大丈夫”ってね…。
だから古代さん、三郎を褒めてやってください。古代さんがそんな風に
思っていたらあいつが浮かばれません。」
二郎が加藤の顔を見た
「ほら、見てください…三郎笑っています。この笑顔は古代さんに向けら
れていると思いますよ。俺はやったぞ、次は古代さんの番だ、って…
世間の眼は全てヤマトにいい方を向いているわけではありません。
だけどみんなが付いています。古代さんも頑張って…。」
二郎が進を立たせて加藤の顔を見せた。
「いい顔しています。…だから私も笑顔で送り出したいと思います。」
二郎がそう言うと進はポケットから羅針盤を取り出した
「それは三郎が肌身離さず付けていた…」(二郎)
進は羅針盤を二郎に渡そうとしたが
「それは古代さんが持っていてください。その方があいつ、喜ぶでしょうから」
と言って受け取らなかった
「そうです、あの子のために…もっていてやってください。」
母もそう言って“お世話になりました”と言った。それから藤堂とユキが話して加藤の母と兄は帰って行った
「森さんですか?」
進とユキがラウンジで休憩を取っているとユキの通信機が鳴った。相手は伊藤だった“お疲れ様です”と言った後伊藤は急ぎなんですが、と言った
<今エアポートに山本さんらしき遺体があると連絡ありました。古代さんと
ご一緒でこの後引き渡しがなければエアポートに向かわれてはいかがで
しょうか?>
伊藤も引き渡しのスケジュールを知っていて今日の予定分は終了してる事を確認してから連絡したが突発で誰かが入ってる可能性もあるので一応確認した。
「いえ、今日は予定通りですから…あの…ちょっと…」
ユキが進の顔を見ながら話していると伊藤の横に藤堂が立った
<ユキ、今裏玄関にエアカーを呼んだ。今すぐ古代と行きなさい。これは命令だ。>
藤堂は進が躊躇するだろうと思いそう言うとユキはほっとした表情になった
「了解しました、森、古代両名、これからエアポートに向かいます。」
ユキはそう言って通信機を切ると飲み物を片手に古代を引っ張ると急いでラウンジを出た。
作品名:yamato2 それから 4 作家名:kei