yamato2 それから 4
「お帰り…待ってたぞ。」
遺体安置所になってる会議室に進とユキは入室した。その中で一番手前にあるお棺に近付いた。進はそっとお棺に触れてふたを開けた
「息がつまりそうだろ?開けてやったぞ…なんなら目を覚ましたっていいんだ。」
進が山本の顔に触れる。ユキは耐え切れず後ろを向いて泣いていた。
「最初に山本を見た時女の子かと思ったよ。髪の毛今ほどじゃないけど
長かったから。で、いつもおしゃれで…最初は島が買ってきてくれてた
服もいつの間にか山本が選ぶの半々になってたな…自分で選べなくて
よく買って来てくれてたな…山本が選ぶと落ち着いてて…。」
進は涙を拭こうともせず山本に話しかけていた。
「あのころに…帰りたいな。」
ユキは涙を拭いて進の背中をそっとさすった。
「山本、もう…バラしてもいいだろう?」
進は涙をぬぐってユキの顔を見た。
「こいつと(山本を見て)加藤…まぁ他にもいたんだけど…ユキに一目ぼれ
だったんだよ。俺と…他にもいろんな連中とイスカンダルの往路は誰が
ユキの意中のヤツなんだ、って大騒ぎしたもんさ。」
ユキは真っ赤な顔をした
「ユキはさ、すごい競争率で…それでも第一艦橋クルーは休憩時間が合えば
気軽にお茶ができたり食事できたり…他の勤務違いのヤツを思えばかなり
有利だったって思う。
イスカンダルの時、思い出すとよくコスモタイガー隊と一緒にメシ食った
だろ?あれは俺や島…相原…をダシにして一緒にメシ食いたかったから、
だったんだ。
俺が月面基地に寄港した時時間が合うとよく呑んだよ。10代の頃は部屋
に酒持ち込んでこっそり呑んでたけどもう、世間的にも許される年になった
から必ず飲みに行ったもんさ。時々イスカンダルの時の話になるんだけど
途中でユキの気持ちに気付いて後方支援に回ったんだと。俺、全然
気付かなくて…」
進はそう言って頭を掻いた
「そうだったの…」
ユキは驚いた表情で山本を見ながら言った
「全然…わからなかったけどビーメラー星の時…私古代くんに飛びつい
ちゃったから…後から思うとそれでバレちゃったかなって…」(ユキ)
「そう言えばそんな事もあったな…随分前みたいだけどほんのちょっと前の
話なんだよな…」(進)
<ヤマト艦長代理、聞こえますか?>
通信機が鳴り進が応答しようとすると先に声が聞こえてきた。
「こちら古代」
<遺体を引き取りたいとお申し出がありました。山本明さんです。
明日、午前10時に来ます、との事です。他の方と重複していないので
このお時間抑えました。>
「了解」
進は短く返事をすると通信機を切った
「お前も…帰るのか。戻るところがるっていい事だな…」
そう言って前髪を整えてやると静かにふたを閉じた。
「私が…古代くんの戻る場所になるから“戻るところがあるっていい事だ”
なんて寂しい事言わないで。」
今日、最後の遺体の引き渡しが終わった後ポツリとユキがつぶやいた。
「ユキ…」
「私、家事とか苦手だけど…仕事があっていつも待っていられないけど…」
ユキの大きな瞳から涙が零れ落ちる
「ただいま、って帰れる場所にちゃんといるから…だから必ず帰って来て…
私が待っている事を忘れないで。」
進はそっとユキの手を握った
「忘れるもんか…ごめん、山本に言った一言が引っかかってたんだね。
両親の元に帰る、って意味だったんだけどね…ごめん。」
進は素直に謝った。ユキも素直に頷いた。
「明日…山本の両親は俺を許してくれるだろうか…」
少し肩を落とした進にユキは
「…大丈夫よ。信じましょう?」
と言った。進は少し笑って頷くと引き渡しで使われていた部屋を出た
「…いつもの部屋に戻ろうか。」
進の言葉にユキは頷いた。
作品名:yamato2 それから 4 作家名:kei