さらば…イスカンダル 1
噂
「そうそう、いい雰囲気だったぜ?」
イメージルームは新乗組員でにぎわっていた。訓練もあるが以前ほど激しくなくワープも限られるため誰もが時間を持て余していた。そしてそこが新人の集まる場所と知っていたので敢えて他のクルーはそこへ行く事はしなかった。
「だけどさぁ森さんって艦長代理と婚約してるんだろ?結婚前に不倫って~のも
ヘンだが婚約者の兄と、ってどうよ?」
平和になると話題が良くない傾向へ走る事はしばしばある
「俺は航海長と仲良く話してるの見てるしなぁ~航海長と艦長代理は同期で
ライバルだろ?横恋慕、て可能性アリじゃねぇか?」
「そうだよなぁ~同じ生活班の相原通信士とはまた違うこう、しっとりとした
感じ、あるよなぁ」
上官がいないと言いたい放題だ。
「まぁ紅一点だからな。よりどりみどり、だ。まして誰を選んでも将来食いっぱ
ぐれはなさそうだしな。まぁ守さんはきっと復職だろ?きっと幹部候補だぜ?
まさしく“安泰”だ。」
新人の中にひとり第一艦橋にいる北野に矛先は向かった。
「なぁ北野、どうよ?メインクルーはさ。お前いつ聞いても何も答えないけど
森ユキは第一艦橋でもヨロシクやってんのか?」
北野は第一艦橋に詰めてる事が多く他のクルーに比べてイメージルームに足を運ぶ回数が少ない。だからたまにいるとその話題でコメントを求められる。
「え?森さんはいつも忙しくて余り第一艦橋にいないよ。今は医務室にいる。
レーダーはアナライザーと太田さんで兼任してるよ。シフトも外れたから
ほとんど顔を合わせないかな。バカな事言うなよ。」
北野は余りその事で仲間に入りたくないと思った。第一艦橋ではどうしたらサーシァに負担を掛けずに守と静かに暮らせる環境を整えられるか、をいつも話していたからだ。
「じゃぁ森さんは結構自由、て事だよな。医務室だったらベッドもあるだろ?
艦長室だって…なぁ…俺も一度お願いしてぇなぁ~ヤマトの艦内服って
そそらねぇ?あれって体型モロでるじゃん?すっげぇ色っぽいよなぁ」
誰もがユキのあられもない姿を想像する。
「やべぇ…しばらくご無沙汰だ。彼女、地球で何してるかなぁ。森さんと
比べたら月とすっぽんだけど。」
大きなため息でだいたい話は終わる…が…
「だけどさ、森さんとスターシアさん、似てたよな…(あのメッセージを見て)
あれじゃ守さん森さんに抱きついちゃうんじゃねぇ?で、女神を落した男
だからなぁ…ユキさんも腕ずくで…“ダメ…私には…”‘いいじゃないか、
弟なら俺が話をつける’なんて言って…宇宙のロマンスから地球の略奪愛…
壮絶だな。」
イメージルームの映像が終わった。
「あ~あ~休憩も終わりか…さて、持ち場に戻るか…じゃぁな北野。なにか
ネタがあったらよこせよ。」
新人たちは持ち場に散って行った。
「…暢気だな…第一艦橋はそれどころじゃないんだ。」
北野がため息をついてイメージルームを出ようとしたところで呼び止められた。
「北野」
振返るとそこに太助がいた。
作品名:さらば…イスカンダル 1 作家名:kei