さらば…イスカンダル 1
北野も太助も一日オフだったのでそのまま太助の部屋に飲み物を持って移動した。
「お前の親父さん、ヤマトのエンジニアだったんだろ?あの沖田さんの右腕、
って言われてた、って…。」
北野は第一艦橋で聞きかじった事を太助に聞いた。
「う~ん、なんだかねぇそう聞くけど家にいた父さんって全くそんな感じが
なくていつも孫のアイコと遊んでたから…だけどこの仕事を選んだ時結構
言われたよ。なんで同じ部署を選んだんだ、って。泣きを見るのを覚悟の
上か?ともね。確かにいつも比べられて大変だけど父さんはいつも“最初
慣れないモンだ。だから失敗もする。だけど大事なのは同じ失敗を二度し
ない、と言う事だ。それとお前には言っておく。とうさんと同じ艦にお兄
さんが“宇宙の鷹”、という人の弟がいる。彼はいつもその兄と比べ
られていたが常に腐らず反対に兄を目標にする事で頑張ってきた。お前も
ワシと同じ仕事をしたらワシと比べられるだろう。だけどそれをどう捉える
か、でお前の人生が変わる。いい方にも悪い方にも転がす事ができる。
お前にその人と同じ考えが出来るか?”って言ってた。今の艦長代理の
事を言ってるんだけどね。俺さ、頑張ろう、って思ったからヤマトに志願
したんだ。」
太助は胸を張って言った。
「だからさっき言ってたこと、絶対ないと言い切れる…だけどあの場でそう
言える勇気がなくて…今頃あの世で父さん怒ってるだろうなぁって…さ。」
太助が少し萎縮した。
「俺さ、幹部候補生、って言われてて自分もその気になっててヤマトのこの
航海は幹部になるステップだと思っていたんだ。だけど訓練じゃない戦いを
実際体験したらそんな事どうでもよくなった。この事を経験しなかったら
俺は白色彗星が見え始めた時の幹部と同じ考えになってしまったかもしれ
ない…ヤマトに乗って初めて分かった…机の上だけで物事は片付かない
ってさ。」
北野はそう言うと
「地球に戻ったら進路変更しようと思う。」
北野はニヤっと笑った。
「え?戦闘班?航海班?」
太助が聞くと
「それは帰るまでに考える。」
と言って笑った。
作品名:さらば…イスカンダル 1 作家名:kei