さらば…イスカンダル 1
「気持ちいいわねぇ~」
ユキがサーシァをあやしながらお風呂に入れていた。
「ユキ、予行練習か?」
佐渡がユキの姿を見ながらつぶやく
「佐渡先生?私小児科にもいたんです。これぐらいの事何度もしました。
予行練習なんて必要ありません…でもほんっとうにかわいい…。食べちゃいたい
くらい!」(ユキ)
サーシァもなんとなく母と似ているユキの顔をみてご機嫌だった。
「さて…疲れちゃうから上がりましょうか。」
ユキは隣の台の用意してあるバスタオルにサーシァを寝かせると手際よく体を拭いておむつを当ててロンパース(真田が速攻用意したもの。)に着替えさせた。
「ほぉ~手際がいいのぉ~これならいつお母さんになっても大丈夫じゃ。」(佐渡)
「佐渡先生?何を言ってるんですか…もぅ…」
ユキは真っ赤になって佐渡に背を向けたがこうして赤ちゃんの世話をしていると将来の自分の姿に思いをはせる…
少しぼーっとした所でサーシァが“ダァダァ”と手を伸ばしてきた。
「抱っこしてほしいのね?さぁどうぞ。」
ユキが抱くと甘えるように頭を肩の下にポコっと乗せる。ユキはスターシアの事を思うと涙が出て来そうで必死にこらえていた。
「ゆきサン、たおるト着テイタ服ハらんどりーデイイデスカ?」
アナライザーが哺乳瓶を持ってやってきた。
「アナライザー、ありがとう。ミルクはちゃんと人肌にしてくれた?」(ユキ)
「任セテクダサイ。私万能ろぼっと。ソンナ事朝飯マエ!」
「さすがね!助かったわ。じゃぁランドリーお願いね。」
ユキがサーシァを片手で抱いてアナライザーを撫でるとアナライザーは真っ赤なライトを点滅させて嬉しそうに洗濯物を抱えて医務室から出て行った。
「サーシァちゃん、のど乾いたでしょう?ミルク飲みましょう。」
ユキは佐渡が座ってる座敷に腰かけるとサーシァの口元に哺乳瓶を持っていった。最初何か不安そうだったが赤ちゃんは口元に何かが当たると本能で吸おうとするのですぐに哺乳瓶からミルクを飲んでくれた。
「よかったわ。哺乳瓶が出来れば一安心ね。」
ユキは腕の中の暖かいぬくもりに癒しを感じていた。
「うまかったか?」
艦長室では守が食事を終えていた。たくさん作った稲荷は大柄の二人の胃袋にしっかり収まった。
「あんなことがあったのに…ちゃんとお腹は減るんだな…」
守が寂しそうにつぶやいた。
「そうだな…生きてる証拠だからな…」(幕の内)
「生きてる…か…。」(守)
「そうだ、お前はこれから娘を守って生きて行かなくっちゃいけないんだ。
辛いのはわかる…スターシアさんは地球人にとって誰一人忘れちゃいけない
人だから…俺たちが今生きていられるのはスターシアさんのおかげだから…
お前の比じゃない事ぐらいわかってる…だけど娘がいるんだ…強くなれ…」
幕の内はそう力強く言った。
「進は?」(守)
「訓練中だろう。メインクルーは夜になると射撃の訓練をするからな。」
守は宇宙空間を見つめた。
「ユキ?」
進が医務室を訪ねるとサーシァをあやしていた。
「あ、古代くん。訓練終わり?」(ユキ)
「うん、終わり。機嫌、いいね。」(進)
「今ね、お風呂に入ってミルク飲んだの。だから一番ご機嫌かも。」
医務室に大きなシンクが置かれその横に大きなテーブルが並べられていた。
「これ、お風呂?でっかい台所みたいだな。」(進)
「ふふふ、そうね。少し大きめのシステムキッチンみたいね。そのシンクみたい
なのが湯船。隣の台にバスタオルしいてそこで体を拭いてあげるの。でその
横にお洋服とおむつを用意しておけば流れ作業で一気に終わっちゃうわけ。
終わる頃にアナライザーにミルク用意してもらえば完璧よ。」
ユキは視線はサーシァに向けたまま進と会話をしていたがひょい、っと抱き上げると
「はい、おじさんよ。」
と言ってサーシァを進に抱かせた
「おい、大丈夫か?」
進が慌ててぎこちなく抱くと
「大丈夫よ、首も腰もしっかりしてるわ。地球の子供の月齢だと10か月、って
所かしら。すごくしっかりしてるから今すぐにでも歩きそうよ。」
進に抱かれてるサーシァをユキがホッペを触って遊ぶ
「ミルクもよく飲んでくれたし…離乳食、幕の内さんに作ってもらおうと
思うの。ちゃんと食べてくれるかなぁ~」
ユキの頭の中はサーシァでいっぱいだった
作品名:さらば…イスカンダル 1 作家名:kei