さらば… イスカンダル 2
決意
「守さん、お食事をお持ちしました。」(ユキ)
ノックした後一言加えて告げると扉が開いた。
「おや…」
守は太田がトレイを持っているのを見て驚いた。
「今日はナイトを連れて来たのかね?」
守が二人を艦長室に招き入れた
「太田くんが是非に、って。お風呂もお手伝いしてもらおうと思って…」
ユキが太田を笑顔で見た。
「そうか…きみは子供、好きなのかい?」(守)
「もう、大好きですよ。だって自分たちより未来を見ていますからね。」
太田はトレイをテーブルに置きながらそう言った。
「未来…か。そうだな…」
守は遠い目になった
「お食事、おひとりで大丈夫ですか?この時間だと真田さんが休憩中だと
思うので…連絡しておきますね。食後にコーヒー持ってきてもらいますわ。
ではサーシァちゃん、お預かりします。」
サーシァはユキの顔が見えるとご機嫌になり手を伸ばしてきた。その横で太田が真田にメールを入れている。
「ではごゆっくり…。」
ユキがサーシァを抱き上げると太田が扉を開いて艦長室を出た
「やっぱりオーラが違いますね。」
太田がユキに言う。
「え?どんなオーラ?」(ユキ)
「こう…先導者、と言うか…真田さんと分野は違うけどこう、近寄りがたい
って言うか…凡人じゃない、って感じ。」
太田が正直にユキに言うと
「ふふふ、古代くんとは随分違うわよね。だって守さんと並んでると本当に
普通にみえるもの。まぁ戦闘中以外の古代くんなんて…みんなのおもちゃ
でしょ?」
ユキが笑って言うので太田はウンウン、と言いながら
「ユキさん、サーシァちゃん、抱っこしてもいい?」(太田)
「あ、結構重いわよ?大丈夫?」(ユキ)
「重いなら尚更…うわぁ~やわらかい!かわいいなぁ~。」
艦長室から直結のエレベーターを降りて医務室へ向かう途中だったのでたくさんの新人とすれ違った。太田はここぞとばかりにかわいい、かわいいを連発する。あからさまにユキはひとりで艦長室に行ったんじゃないとアピールするように…
「へぇ…太田くん、本当に子供が好きなのね。」
ただ感心するユキだった。
「入るぞ。」
真田がノックもせず艦長室にコーヒーサーバーを手に入ってきた。
「変わってなければブラックだろう?」
守は“あぁ”と言うとカップを棚から下した。
「真田、俺は地球に行って何をしたらいい?」(守)
守の視線は宇宙空間にあった
「サーシァは多分、地球じゃ育てられない。佐渡さんにも話した。もう、隠せない。
森さんも何となく気付いているらしいし…俺の前では何でもない風にして
くれるけど…。」(守)
「なぁ…俺に一つ考えがある。」
真田が身を乗り出した。
「長官にお願いしようと思っているんだが…あの艦隊が今度は地球に矛先を
向ける可能性がある…と俺は思っている。あの艦隊はこのヤマトが地球の戦艦
だと知ってしまった。俺がヤマトを預かって誰の眼にも触れない所で戦力up
させようと思っている。サーシァの成長が落ち着くまで俺が面倒見る。」
真田の申し出に守は驚いた顔をした。
「あと、お前を軍に復職させる。」(真田)
「真田!」(守)
「あのサーシァの成長度合いを誰にも見せず育てるにはできるだけ人とかかわら
ないように育てなくてはいけない。だけど誰とも顔を合わせない、と言うのは
成長過程で良くない事だ。大人の中でしか育てられないが…成長が収まったら
地球で二人で暮らせばいい。1年だろう?今プランを考え中だ。何事もなければ
俺は近い将来お前とサーシァは二人で暮らせると思う。」
真田ははっきり言い切った。
「俺はサーシァに付いていてやりたい。」(守)
「俺もそうさせてやりたいが…長官が放っておかないだろう。」
真田がコーヒーを足しながら言った。
「自分の事よりサーシァの事を優先させろ。このまま地球に連れて帰れば
あの子は実験台になってしまう。地球人と地球外生命体との子供…わかるだろう
サーシァの為にも…俺が…見る。」(真田)
「…少し…考えさせてくれ…」
守は真田から視線を反らし宇宙空間を見つめた
作品名:さらば… イスカンダル 2 作家名:kei