さらば… イスカンダル 2
「島です。」
島が守を訪ねていた。
「久しぶりだね…元気だったかい?」
守はソファーをすすめた。
「…失礼します。サーシァちゃんは?」
空のベビーベッドを見て島が聞いた。
「森さんがお風呂入れるために連れて行ったよ。太田君と一緒にね。太田くんは
子供が好きなんだって。まぁそんな感じだよね。だけど助かるよ…サーシァを
見ていると時々スターシアを思い出してしまうんだ。」(守)
「守さん…」
島は何を話したらいいか考えた。が、
「キミには本当にお世話になったね。ご両親にもお世話になったと…進がキミの
実家に泊まりに行くとき必ずメールが来てね…とても良くしてもらってる事
弟がいてまるで自分を見てるようで微妙だと…いつも楽しそうなメールが
届いていたよ。兄らしいこと何ひとつできなくて…本当にありがとう。」
守が頭を下げた。
「いえ…両親も自分一人で帰ると古代くんは、って聞かれるんですよ。
それに自分一人で帰るよりなんだか気分が楽なんです。あいつが次郎の
相手を結構してくれてたので…。あと、うちに最初、来た時コットンの
タオルをお土産に持ってきてくれたんですよ。守さんに言われた、と言って
ましたがあいつ、自分にも手土産包んでくれてて次郎には服を買ってくれ
ました。その気持ちが嬉しくて…。」
島が当時を思い出した。
「多分、守さんは両親お土産買っていきなさい、ぐらいしか言ってないと
思うんですよ。だけどあいつは自分と弟と忘れず用意してくれたんです。
その気持ちが嬉しくって…いいやつだな、って思ったんですよ。あれは訓練
予備生になってちょうど一年だった時ですね。勉強で忙しくて…自分たちの
事、お互いあまり話してなくて…最初自分の実家に連れて行くときもすぐに
うん、とうなずかなかったんですが10歳年の離れた弟がいる、と言ったら
付いてきました。次郎を見て自分を見てる気分だったと思います。」(島)
「そうだね…そうかもしれない。」
守は幼い頃の進を思い出していた。
「争い事が嫌いで…平和主義だった…。まさか戦闘班長になってイスカンダル
まで…あのガミラスを破って来るなんて…信じられなかったよ。」(守)
「自分たちもそう思いました。生きるか死ぬか…自分たちが死んだら地球も
終わる…いつもギリギリでした。ギリギリのところで戦っていました。
ただ自分の部署と古代の部署は考え方が正反対だからどうしても意見が
対立してしまう。進みたいけど戦わないと進めない…戦うと遅れてしまう…
お陰で結構ケンカしましたよ。多分、ユキはあきれていたと思います。」
守は島がユキと呼び捨てにした事に気付いた。
「今、森さんの事呼び捨てにしたけど…」
守が聞くと
「あぁ、そう言えば自分と真田さんと古代は呼び捨てですね。沖田さんも
呼び捨てでした。長官も…そう、ユキは長官の第一秘書でヤマトが出航する
時だけヤマト配属になるんです。」(島)
「…似合ってるな。」(守)
「そうでしょ?前にテロがあったんですけど…ユキは護衛としても充分鍛え
られています。しっかりVIPを守って…詳しい話は真田さんから聞いてく
ださい。真田さんはユキの後見人で自分たちより付き合いが長いので。」(島)
「へぇ…いろいろ聞いてはいるが…」(守)
「ユキなら何でも任せられますよ。コーヒー以外は…。」
島がそう言うと
「コーヒー?」(守)
「ユキの入れるコーヒーがまずくて…当時はインスタントも粗悪品だったから
しょうがないんですけど…」(島)
「そうだね、そんな頃だったね。」(守)
「守さん、地球に戻ったら驚きますよ。復興ぶりが急激過ぎて…自分も古代も
時代に取り残されたような感じでしたから…。」
長い任期を終え戻った日は浦島太郎の気分だったのを思い出す。
「イスカンダルに行って帰った時が一番いい時だったかもしれません。軍も
変わりました。なんとかしたい、と思っていたのは長官だけだったでしょう。
自分たちも長官がいなかったらどうなってたかわかりません。」(島)
「長官は穏やかな人だけどとても厳し人だ…沖田さんと時々やりあってるの
見た事があったよ。」(守)
「へぇ…若かりし頃?ですか?」(島)
「そうだな…俺が軍に出入りしてた頃はまだ長官は参謀だったから…艦隊司令
の沖田さんとは意見を戦わせいていた。」
守は進とキミみたいなもんだ、と言いそうになった。
作品名:さらば… イスカンダル 2 作家名:kei