さらば… イスカンダル 2
「平田くんはいくつなんだい?」(守)
「私は艦長代理より2歳年上です。彼らは飛び級で来たので…当時は同い年
だと思っていたので驚きました。それを知ったのはヤマトに乗りこんでから、
でした。年下だけど…本当に命を預けられる、って思います。」
平田は胸を張って言った。
「前回の戦いは…本当に生き残れたのが不思議なくらいです。もう、なにも
怖いものはありません。」
平田の眼にかつての部下の眼を思い出した。
(同じ目だ…)
「命は…一つしかない…大切にしてくれ。」
守がそう言うと平田は
「…もちろんです。この命はイスカンダルのスターシアさんがくれたもの
だと思っています。大切にします…ご安心ください。」
平田は守がもうすぐ食事を終えるのを見て…
「ここ、ミニキッチンあるので食後のコーヒー…(立ち上がって棚を見る)
ありますね…お湯、沸かしましょう。」
平田は手際よくコーヒーをセットし始めた。
「守」
真田がノックして入ってきた。
「お疲れさん…もうすぐ地球だ。」(真田)
守はうなずくだけだった
「長官と相談した結果…お前とサーシァ、アナライザーと佐渡さんを月で下す。」
守はじっと真田を見た。
「理由は…分かってるな…すまん、俺にはお前とサーシァが地球に行って
いい事がないと分かっている以上連れて行くわけにいかん。」
真田も辛そうだった
「が…ヤマトは今後の為にメンテナンスを行う事にした。俺がその担当者に
なる…お前は少しの間俺を手伝え。」
真田がニヤっと笑う。
「ほんの少しの時間しか稼げないかもしれないがお前が正式に軍に復帰する
まで時間を稼いで…サーシァとの時間をつくる。アナライザーと佐渡さんは
サーシァが落ち着くまで一緒にいてもらって…落ち着いたら通いで様子を
見てもらおうと思う。長官もOKしてくれた。」(真田)
「この事…進には…」(守)
「月で下りる事は言わないとまずいだろう。サーシァが地球で暮らすには
環境が合わない、と言って…これは本当の事だ。理由は言わなくても余り
深く詮索してこないと思う。」(真田)
「すまんな…。」(守)
「多分一番残念がるのはユキだろう。」(真田)
「進、すまんが艦長室に来てくれ。」
守が進を呼び出した。進は休憩時間だったのですぐに守の元へ向かった。
「入ります。」
軽くノックして進は艦長室に入った。
「寝てるの?」
進はベビーベッドを覗き込む。
「あぁ、おいしいもの食べさせてもらって…助かったよ。俺一人じゃどう
したらいいかわからなかった。森さんにもずいぶん助けられた…。」(守)
進はユキと婚約してる事を言いそびれていた。
「進、こんなだらしない兄貴で悪かったな。お前の前ではしっかりした兄さんで
いたかったが今回は無理だった。さすがに…効いたよ。だけどヤマトのクルー
のおかげで随分気持ちは楽になった。何よりサーシァとお前がいる…
だから…乗り越えられそうだ。」
守の暖かい視線の先にはサーシァがいた。
「最初は…サーシァの顔を見るとスターシアを思い出してしまって涙が止まら
なかった…だけど時間と言うものはありがたいもんで…過ぎていくと
いい事しか思い出さなくなる。まぁ二人しかいなかったし…スターシアが
温厚だからケンカなんかした事一度もないけどな。」
守がしっかり進を見る
「いいか?進。お前は大切な人の手を離すな。その一瞬を後悔しないように
生きろ。」
守が肩にしっかり手を置いて力強く言った。
「それとお前に話さなくてはいけない事がある。サーシァなんだが…佐渡さんに
健康診断してもらった結果サーシァは成長過程で地球と環境が合わない
事が判明した。最初の検査ではわからなくて…しばらく経過を見てたんだが…
そこで長官の配慮で一度月で下りる事になった。」(守)
「え?月?」(進)
「あぁ…佐渡さんとアナライザーが付いてくれる。心配いらないよ。しばらくは
軍の施設にいられるから…。」(守)
進は何となく守の言い方に何かを含んだ感じがしたので敢えて深く聞くのを止めた。
「ユキは…連れて行かなくていいの?」(進)
「森さんを連れて行ったらお前が困るだろう?」
進は守の一言に顔を上げた。
作品名:さらば… イスカンダル 2 作家名:kei