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さらば… イスカンダル 2

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  「真田から聞いたよ。随分間に婚約した、ってな。おめでとう、なんだが…
   真田の特権で日報を読ませてもらった…まさか俺のいない間に凄まじい
   戦いがあったなんて…知らなくてすまなかった…。その戦いがなければ
   結婚していた、とも…」(守)
  「だけどね、兄さん。おかげで“一緒にいる”の意味がわかったんだ。
   ただ横にいるだけが大切なんじゃなくて“信じてる”気持ちが大切なんだ、
   てね。ユキはいつも、どんな時もそばにいてくれた。だから式を挙げる
   挙げないじゃないって気付いたんだ。」

進は笑顔だった。昔、両親が生きている頃の笑顔そのものだった。

  (強くなった…あの子が相手じゃそうなるか…)

守は進が自分を追い越していった事に気付いた









  「ユキ」

進が医務室にいるユキを呼び止めた。

  「はい。」

ユキも何か察してるようでいつもと違った。

  「サーシァなんだが…」

ユキの眼が大きく見開く

  「地球に合わない所があるらしく…一度月で下りる事になった。」

進がそう言うとユキは何も言わなかったがその代りに大きな瞳からぽろぽろ涙が落ちた

  「ユキ、ありがとう。感謝してるよ。ユキが一生懸命サーシァの世話をしてた
   事、知ってる。自分の子供の様に頑張ってくれてたの知ってる。だけど俺にも
   どうしようもできないんだ。」

進はそっとユキを抱きしめた。

  「いいの…分かってた事だから…何となく…サーシァちゃんの世話をしていて
   このまま地球に行かないような気がしてた…だから私大丈夫よ。分かってたけど
   頭で分かってても気持ちがついて行かないの。もう、泣かないから今だけ
   泣かせて…」

震える声でユキが泣きながら訴えた。進はそっと抱きしめて背中を撫でてあげる事しかできなかった

  「サーシァにはアナライザーと佐渡さんが付いて下りる…安心だろ?」

ユキは頷くだけだった。








  「守さん、サーシァちゃんお預かりします。」

いつものようにユキが艦長室へ行ってサーシァを預かりに来た。

  「森さん、ありがとう。」

守もサーシァを抱いてユキに渡す。

  「古代くんから聞きました。月で下りるそうですね。」

ユキのまだ少し赤い目をみて守はドキっとした。

  「…あ、あぁ…ずっと世話になってしまっていて済まないと思っているが…。」

守が言葉を濁したが

  「何となく…ずっとサーシァちゃんと一緒にいましたからわかります。だけど
   いつか地球に来れるんですよね?」

ユキがサーシァをあやしながら聞くと

  「…もちろんだ。その時はちゃんと挨拶に行くよ。待っててほしい。」

ユキはその一言を聞くと

  「サーシァちゃん、お預かりします。」

と言って艦長室を出た。サーシァを抱きながら涙が止まらなかった。
作品名:さらば… イスカンダル 2 作家名:kei