永遠に…の傷跡 1
進は艦橋を出て自室に行く前に以前ユキが使っていた自室へ向かった。
ユキの部屋の隣はサーシァが使っていた。
進は同じ部屋を進めたが
「ここにはユキさんの心があるから」
と言って使用しなかった。今思うとサーシァはユキの心がヤマトに届いていると感じていたのかもしれない、と進は思った。
ユキの部屋の扉をじっと見つめ立ち尽くす進に真田と島が声をかけた
「食堂にもいないし自室にもいないし…宇宙遊泳でもしてるかと思ったぞ。」
「真田さん…それに…島…大丈夫なのか?」
二人はうなずくと
「あぁ自動操縦にしてきてアナライザーを派遣して来た。今日のワープは終わったし
特に問題ないだろうと判断してみんなに声かけて席はずしてきた。古代、食事は
いいのか?」
「真田さんこそ食事していますか?」
「二人とも…とりあえず食事テイクアウトして…俺の部屋でちょっといいか?」
「島?」
進は両脇を二人に挟み込まれる感じで食堂へ向かいサンドイッチをテイクアウトして島の部屋に三人で向かった。
メインクルーの部屋は他の乗組員より少し広めにできている。小さなテーブルを置いてテイクアウトしてきた食事を三人で食べ始めた。
「いただきます」
進は一時に比べれば食べる量は増えたがそれでも寝る前などは以前の半分にも満たない量になっていた。
食べ終わり食後のコーヒーを島が持ってきた。進にはホットミルクが運ばれてきた。
「本当の牛乳じゃないけど…かなり本物に近い。」
島はそう言いながらホットミルクを進に渡した
「コーヒーじゃもっと胃が荒れてつらいだろう?」
真田の言葉にはっとして進は顔をあげた
「サーシァの事は…少し吹っ切れたか?」
進は少し顔を下げつつも
「吹っ切れませんが…サーシァのために…あまり考えないようにしてます。」
「そうか…(島の顔を見てうなずきながら)ちょっと…キツイかもしれんがちょっと聞いて
ほしい。ユキの事なんだが…」
進は例の食堂で聞いた話だ、とすぐ分かったが顔に出さず聞いていた。食堂で聞いてからすでに2週間過ぎている。なにか進展あったんだろうか
「ユキ?」
「地球で待っているユキの事なんだが…誰かがやっかみで流しているとしか思えない
んだが悪い噂が立っている。絶対、ユキの事だからありえないと思っているがユキが
…ユキが捕虜になっている間に敵将のところにいたそうだ。これは実話なんだがそこ
でユキが寝物語に…爆弾の図面をもらったのではないか?という……」
進の厳しい視線に真田が一度話をやめた
「絶対あり得ないことなんだ。もし…それが本当だとしたら…ユキは決死隊に志願
しないで図面を誰かに渡して……俺たちの前から姿を消したと思う……」
島が声を殺しながらつらそうにそう言った
「おそらく今藤堂さんだけがユキの味方だろう。でもその藤堂さんもきっとハードワーク
でいつ倒れるか分からない。年齢が年齢だから疲れも出て当然だろう。
ユキは普通の女性に比べたらうんと強い人間かも知れない。でもそれは俺たち…
いやお前がいるから強くなれるんだ。ユキの事だから気丈にしてると思うが仮面
ひとつ剥いだらきっとボロボロだろう。
ユキは俺にしてみたら妹のようなものだ。お前たちが火星に特別訓練生で行って
いた前から知っている。この裏にはヤマトをつぶそうとしてる人間が動いているかも
しれない。いいか、古代。おまえは地球に戻ったらだれが何と言ってもユキを守るん
だ。分かったな!」
真田の眼は真剣だった。進は島の‘俺たちの前から姿を消したと思う’が頭から離れなくなってしまった。
「真田さん…どうしていつも傷つくのは自分じゃなくて…周りの人間なんですか?
どうして俺じゃないんですか?サーシァもユキも兄さんも!どうしてみんな俺を
置いて…」