永遠に…の傷跡 5
真田がユキを見る目がいつも優しいのはそんな理由があったとは知らなかった。
「古代は知ってるんですか?」
「いや?わからんな。でもあいつの知らないユキを知ってるのもちょっと面白いだろう?」
真田の意地悪そうな顔を見て島も笑ってしまったが
「きっと今の話聞いてたらすっごい機嫌悪いでしょうね。」
二人はちょっと気になって静かにしてみたが心配いらない様子で爆睡中だった
「ユキが倒れた時は…イスカンダルの帰りを思い出してしまいました。」
島がつらそうに言うと
「あの時は…俺自身…辛かった。目の前でユキが落ちていったからな…あと…
もう少し…だったからな。」
「でもあの事がなかったら古代はなかなか告白できなくて大変だったかもしれま
せんよ。あいつ放射能除去作業済んだらすぐ行っちゃったでしょ?」
「そうだよな。ユキなんか念のためって入院させられちゃって…全然会えなかった
んだろう?島、その時毎日見舞いに行ってたらお前にコロっと心変わりしたかも
しれんぞ?」
「そうですかねぇ~結構通ったんですが…ユキは俺が行っても南部が行っても
喜んではくれるんですが聞くことは古代の事なんですよ。だめだこりゃって世界
ですよ。ヤマトの中にいるときはいっつもケンカしてたくせに…」
二人の会話が盛り上がってるところへまたノックの音がした。熟睡してた進の目も覚めて進が“どなたですか?”と声をかけると
「南部です」
と言って扉を開けて入ってきた。
「どうですか?ユキさん。」
進のところは素通りでユキの元へ来てちいさな一輪ざしにほのかに香るバラを持ってベッドサイドまできた。
「イメージにないな。」
島が驚いた様子で言った。
「殺風景ですからね。あまりたくさんだと匂いがきついし…でもこれくらいだったら
気にならないでしょう?」
そう言って枕もとに飾った
「あれぇなんで真田さんが手を握ってるんですか?俺が握ったら絶対殺されます!」
いつの間にか進が南部の後ろにいた
「殺しゃぁしねぇって。まぁったく人をなんだと思ってるんだか…
真田さん、すみません、すごい熟睡しちゃったみたいで…変わりありませんか?」
「さっき佐渡先生が来て様子見て行った。血圧が昨日より少し上がってるから
大丈夫だろうと。でもまだ酸素は付けておいた方がいいらしい。」
よく見ると昨日より顔色が良くなってる気もする。
「ほら、古代、代われ。」
真田が席を立ち進とバトンタッチするようにユキの左手を渡した。
「俺は少し眠るから静かにしろよ。」
そう言うと特技と言わんばかりにソファーに横になるとさっさと目を閉じた
「相原が…お母さんが秋田で待ってるって言ってるから病院に来れない、って
よろしく伝えておいてほしいってさ。」
「そうか…お母さん無事だったのか。よかったな。島のところはどうなんだ?やはり
まだ地下都市にいるのか?南部の実家は結構ヤバかったんじゃないか?」
「うちは郊外だからな。実家は大丈夫だった。でも寮は何も残ってない。南部の
所もそうだろう?」
「実家は結構あらされました。でも大事な書類は地下都市の金庫にしまってあったので
難を逃れたんです。よほど寮の方がヒサンだったな。なにも残ってないよ。」
進も自分の部屋が気になったが
「そうか…でも家族が無事でよかったな。」
進がそう言うと
「ほら、古代。おまえに食わせろってかーさんが持たせたんだ。手と顔洗って来いよ。」
島が言うと
「じゃぁ悪いがユキの手、持っててくれるか?」
進がそう言ったので
「お!いいのか?お許しが出たぞ。」
「古代、次は俺で!」
「なに言ってんだよ、南部も手を洗って一緒に御馳走になろう。」
進はみんなが助けてくれる…そう思いなんとかユキを救おうと決心したのだった