永遠に…の傷跡 6
進と真田は静かにユキのベッドの横で様子を見ていた。
計器類はユキの体が正常な数値に戻ってきてるのを教えてくれている。
右腕には栄養剤の点滴が続いている。とてもじゃないが胃をかなり切っているので当分食事は取れない。
真田は進を初めて見た日を思い出していた。
沖田艦長を見あげた時の厳しい視線…同期の中でも投げやりな態度…でもたまにふと淋しそうな顔になること…
いつの間にか…自分以外の人間の事で涙が流せるようになって…
島が置いて行ったコーヒーを飲みきると真田はベッドサイドから立ち上がると
「古代、悪いな。寝る。お前も寝ろよ。」
進がうなずくと“おやすみなさい”と言ってユキの枕もとの照明も暗く落とした
しばらくすると真田の寝息も聞こえてきた
(本当にどこでもすぐ寝れるんだなぁ。工作班に配属になるとそれが特技になるのか?)
進はくだらない事を考えながらユキの寝顔を見た。よく見ると涙の痕が乾燥していたのでユキのバッグの中からクリームがないか見ようと思って左手を外そうとしたがユキの力が入っていて外せなかった。ふとユキを見ると目が覚めている
「ごめん、起しちゃったか?」
「ううん…今起きたの。そしたら手が抜けそうで…怖かったの…また目が覚めて…
真っ白な部屋だったら…古代君が帰ってきたのが夢で…まだ捕虜かもって思うと
怖くて目を開けられなかったの。」
「そうか…大丈夫だよ…ずっと…ずっとここにいるから。さっきまで真田さんも起きて
いたんだけどね。…真田さんは行くところがないって、ここにいてもいいかってさ。
いいよな、ユキ。」
ユキは黙ってうなずいた
「今日はな、佐渡先生が朝おにぎり差し入れしてくれて…島もサンドイッチ持って
来てくれて…南部がキザなんだよなぁ~ほら、枕もとのバラ。それも1輪。
相原はリンゴジュース。ユキ以外絶対飲むなって。山崎さんはスエット。
あ、のど乾いてないか?少しなら水を飲んでいいって。」
ユキは首を振っていらない、と言った。
「ユキ…」
進が何か言おうとしたときユキの瞳から涙がボロボロこぼれてきた
「どうした?なんか思い出したのか?どこか痛いか?つらいか?」
「…もう…一緒に…いられない…って言ったのに…ごめんなさい…怖い、だなんて…」
計器の音が少し違うリズムで音を立て始めた
「ユキ…落ち着いて…今は体の事考えよう。ゆっくり息を吸って…ユキはね手術したの
胃潰瘍と十二指腸潰瘍。普通は手術なんてしないんだと。けどひどくて手術した方が
早く良くなるって言って…ユキは看護師だからわかるか。でもきっと自分で思ってる
よりうんとひどかったんだと思う。
もしユキが俺と一緒にいて辛いって思ったら…仕方ないかもしれないけど…でも…
俺にはユキが必要なんだ。極端な話、ユキが交通事故で寝たきりになったって…
こうして横にいてくれればいいんだ。ちょっと極端すぎたか?
だから…頼むからそばにいさせてくれ…兄貴も…サーシァも…いないんだ。
俺にはユキしか…いないんだ。
それにもしユキが一緒にいて俺に迷惑がかかるなんて思ってたらそれは違う。」
進はユキの涙を拭いた