永遠に…の傷跡 6
佐渡が看護師一人連れて急いで病室に入ってきてユキの処置をした。
佐渡は何も言わず“頼んだぞ”と言って出て行った。
「真田さんは今買い物に行ってるんだ。いつまでも山崎さんのスエット着てるわけに
いかないからね。俺のも適当に買ってきてもらってるんだ」
進は汗の引かないユキの額にタオルを当てながら優しくそう言った。
「大丈夫か?少し背を起こそうか?」
ユキは少しうなずくとベッドの背を少し上げてもらった
「痛いところはないか?」
ユキはうなずいた。
「かゆいところないか?」
ユキは笑いながらうなずいた
「嫌いなところあるか?」
ユキは首を振った
「うそつけ!あるだろ?」
ユキは首を振った
「じゃぁ…あの一言…取り消そう。」
ユキは進から視線を反らした
「嫌いじゃないのに…一緒にいないとだめじゃないか。」
ユキは今度は静かに酸素吸入器を外した。
「大丈夫か?」
「当ててれば大丈夫だと思う…。」
小さな声だがきちんと聞き取れる
「もう一度言うぞ、嫌いじゃないなら…あの一言は取り消しだ。」
ユキの瞳に涙がたまる
「ったく…泣くのは反則だぞ!」
進はさっきのタオルでユキの涙を拭いた
「いいな、取り消しだ!」
「さっき…夢の中で…私は…現実でしようとしてたことを実行しようとしてたの…」
ユキは静かにそう言った。
「でも怖くて…必死に古代君に助けを求めたの…そしたら助けに来てくれた…」
進はずっと左手を握っている
「私は…古代君を裏切ろうとしたの。」
「そうか」
「死んだって聞いて…信じたくなかったけど…もし古代君が死んじゃったら…もう
生きてたって仕方ないって思って…だったらみんなのために自分が出来るただ
ひとつの事をして古代君のところへ行こうって思ったの。」
「そうか」
「ごめんなさい…」
「どうしてユキが謝る?」
「だって…」
「いいんだ…ユキがこうして生きていて…目の前にいてくれればそれでいいんだ。
俺に対してユキの裏切りはね」
「?」
「死ぬ事だよ。」
進は真顔になった
「それだけなんだ。もしユキが他に好きな人が出来たとしても…例えだぞ!
それでも俺はユキが生きていてくれれば…それでいいんだ。」
ユキの瞳からぽろぽろと涙があふれてきた
「ほら…肩で息してるじゃないか…ちゃんと当てて…」
ユキは静かに酸素吸入器を口元に当てた
「これからは俺だけじゃない。みんなが付いてる。一緒に戦おうって言ってくれてる
もうひとりじゃないんだ。大丈夫だから…。一緒にがんばろう。」
ユキはただうなずくだけだった