永遠に…の傷跡 9
「南部くん、いろいろ…ありがとう。私何も知らなくて…」
「なに言ってるんですか、俺らユキさんに何かあったらって思うといてもたってもいられなかった
ただそれだけですから…普段ユキさんは働きすぎなんですよ。ほどほどにしないと
こうなっちゃうってことですからね!まぁったく古代なんて何もできないんだから…
まぁあいつがここでテキパキしてるもの怖いっすけど!」
南部が出来るだけ明るく言った
「確かにそうね、私も想像できないわ……でもどうして中央病院じゃだめだったの?」
「まだ億足の域を出ていないんですが…ちょっと厄介なことが起きそうで…今私が囮捜査
開始したばかりなので…」
「…そう…きっと私の事よね、あの噂の事でしょう?」
ユキの表情に陰りがでた
「ユキさん、ヤマトの乗組員でそのこと信じてるやつは誰もいないですよ。大丈夫です
俺らが何とかしますから!ユキさんは体を治すことだけ考えて下さい。」
「…ありがとう…でももし私に出来ることがあったら言って…」
「…わかりました。古代が了承するか分かりませんがね」
「それにしても南部君、いいの?こんなところで油売ってて…取り巻きの女の子が帰還を
待ってたんじゃなくて?」
「ユキさんまでぇ…そりゃ待ってる子いますよ?待ってる子10人を天秤にかけてもユキさん
にかなう子はいませんって!」
「南部くんって普通言えないようなことさらっと言っちゃうのね。ウソでもうれしいわ。ありが
とう…。」
ユキは素直にお礼を言った
進はミニキッチンの方へ向かいユキに聞こえないところで長官に連絡を取った
「…古代です。先日はありがとうございました。佐渡先生からお聞きになりましたか?」
<あぁ、聞いたよ。大変だったそうだね…今は落ち着いているのか?>
「はい、ユキの熱も37.5まで下がりこの後熱が上がらなければ大丈夫だろうということで
す。ご夫人は大丈夫ですか?」
<今ちょうど南十字島へ留学で行っていた孫が戻っていて…ユキのいなくなった寂しさを
埋めてる感じだ。大丈夫だよ、そうかユキも回復の兆しが出てきたか、よかったな。古代>
「はい…でも今後の事を思うとちょっと厄介なことになるかも…と思いまして…で、昨日
織田が直接南部に接触してきました。」
<織田と言うと…前議長の織田くんかね?>
「はい…」
<なぜ織田と南部なのか?>
「ユキのスキャンダルに乗せて私と長官を陥れようとしてるのかもしれません。まだ推測の
段階ですがそれはほぼ間違いないと思います。」
<…そうか…>
「今お孫さんが戻ってきてると?」
<そうだが?>
「織田はユキの居場所を徹底して探してるようです。お孫さんはしばらく長官宅に在宅の
ご予定でしょうか?」
<自宅がかなり崩壊したのでしばらくここに居させてくれ、と息子夫婦からも言われている>
「長官とそのお孫さんが了承してくれたら…お孫さんをユキの代わりに…ユキは長官宅で
休養中と言うことにしてくれませんか?」
<…ここにいるとなれば織田は手出ししないしそこも安全と言うことか…>
「織田は自分の息子にユキを…と思ってるかもしれません。今ユキが病院にいて治療を
受けているとわかれば…中絶したものと思いマスコミに流す可能性があります。長官
に無理なお願いをしているとお孫さんにもご迷惑をおかけすることとなり申し訳ないんで
すが…今織田をユキから視線を外させるにはそれが一番かと…」
藤堂はしばらく考えて
<わかった…古代。晶子にそう伝えよう。妻が見舞いに行きたいと言いそうだがしばらく
行かない方がよさそうだな。>
「…ご夫人にはユキがお世話になって…こんなお願いして本当に申し訳ないと思っていま
すが織田が早く動けばその分解決が早いと思いますので…事が片付いたら…と伝えて
いただけますでしょうか」
<古代、すまんな、ゆっくり休ませてやれず…こっちの事は任せてくれ…何かあったらまた
連絡してほしい。>
進は最後敬礼して携帯を切った