永遠に…の傷跡 10
真田と南部が801へ移動してしばらくするとフロントから泉が来たと連絡がきた。5分ほどするとボーイと一緒に泉が入って来た
「空間騎兵、泉です。」
敬礼すると真田と南部も敬礼を返した
「宇宙戦艦ヤマトの真田とこちらは南部です。どうぞ奥へ…」
真田は奥のソファーへ案内した。泉は小脇に端末を抱えていた
「復興、お疲れ様です。大変忙しいところお呼び立てしてすみません。まず食事でもしながら
お話を伺ってよろしいですか?」
南部が丁寧に話を進める。テーブルには太田が作ってきたサンドイッチと手配したコーヒーとサラダ、ロールパンが並んでいた。
「…遠慮なく頂きます。…私が食べてる間…これ…見てくれますか?」
泉はそう言うと端末を立ち上げて日誌を見せた
最初の画面に
空間騎兵 斉藤 始
そうはっきり入力されていた
「…これは…!」(真田)
「…斉藤の遺品に入ってた端末です。遺族に渡したのですが友人の私に、と渡されまして…
森さんには話したんですが…この戦いで命があればお見せしましょうと…ヤツはとても
いいやつでした。もうすぐ地球に配置転換、って時に…そのままヤツは戻ってこなかった
どうして、ってなんでヤツが?って思ったんです…でもそれを見て…わかりました。
最後何も書かれてませんが森さんにヤツの最期を聞きました。ヤツらしい…立派な
最期だったと…詳しい話は日誌をみながら話そうと暗い洞窟でそう思っていました。」
そう言うと泉は黙ってしまった。真田と南部は食い入るように画面を見つめる。泉は小さくいただきます、と言うと真田と南部の顔を交互に見ながら食事を始めた
真田はその端末に見覚えがあった。現地にずっと記録して来た端末を置いてきてしまったので代わりの端末がほしいと頼まれ用意したものだった
泉は職業柄食事が早い。あっという間に食べてしまいコーヒーをすすったところで真田がそれに気付き本題に入ろうとした
「…森さんは…大丈夫ですか?」(泉)
「…とりあえず今は落ち着いています。一時は危ない状態になりましたが…」(真田)
「ケガでもしていたんですか?」
泉は立ち上がり今にも真田に襲い掛かりそうな勢いでそう言った。南部が泉の肩を押さえて
「…例の噂と過労で潰瘍が出来て貧血もひどかったので…今入院しています。」
真田が静かに言った。泉はおとなしく座ると
「…だからお嬢さんはおとなしく本部で座ってろって言ったんですよ…(くやしそうに)偉そうな
お偉いさんたちは本部でデンと座って何もしちゃぁいない。でも長官は自ら差し入れを持って
来てくれたり作戦練るために現場に足を運んでくれてた…あんな細い体で肉体労働なんて
無理なんだって言っても聞かないんだ。余りにもフラフラで…何度か無理やり休憩所に
運んだことあったけど…言っておくけど…何もしてないからな!だってよ、あの古代が
彼氏なんだろ?斉藤とやりあってヘーゼンとしてるやつとなんかじゃ勝ち目ないからな。
本当に頑張ってたよ…森さん…穴倉だから空気も薄くて…あんな女は見た事ないですよ
…中には森さんを襲おうとしてたやつもいるって噂があって…あれだけ弱ってて気力だけで
頑張ってるんだ、ここで男に襲われたらきっと抵抗できないだろうと思ってそれだけは絶対
あってはいけないことだと思って俺がいつも一緒にいたんだ…でも誤解しないでくれよ、
いつも一緒にいたのは俺だけじゃなくて俺の隊員も一緒にいたんだ。俺が一緒にいて誤解
されるのはちょっとうれしいけど森さんには迷惑以上のものにならないからな」(泉)
「ユキの事はどこで?」(真田)
「…その日誌の最後の方に森さんの写真出てきます。そこで婚約者が艦長代理の古代進で
とか…最初はヤマトの批判ばっかりだったんですけど途中からそれもなくなります…」(泉)
作品名:永遠に…の傷跡 10 作家名:kei