永遠に…の傷跡 10
時間は午後2時に差し掛かろうとしていた。ユキの部屋のドアをノックする音がして隣の病院の山下と山田が入ってきた。
「どうですか?随分顔色良くなってきましたが少し痛みありますよね。これ(点滴を指さして)
より少し強めのにしますか?」(山下)
「…いえ…大丈夫です…このままでいいです。」
看護師の山田が点滴を替えようとしていたがユキがそう言ったのでいままでと同じ点滴を器具につるした。
「そろそろ食事を始めてみましょうか。最初は主湯から始めましょう。飲み物は人肌くらいに
覚ました白湯を…少しずつ。あぁ森さんは看護師だったんですよね。」
山下はエコーを取り出すとユキの腹部に当てて診察した。
「潰瘍は大丈夫ですが無理するとまた同じ状態になりかねません。とにかくストレスを与えない
よう環境を整えてください。」
「わかりました」
進はエコーの画面を見ながら山下の言葉を聞いていた。進はなんだかよくわからない画面だがユキは理解できているようで山下の説明にうなずいたり聞いたりしていた
「今度は夜来ますので…」
そう言って二人は退室していった
「…ユキ、鎮痛剤効いてないんだろう?どうしてもう少し強めのに替えてもらわかなった?」
進の問いに何も答えずじっとユキは進を見ていた
「体力の回復が遅れるって言ってただろう?」
そう言ってユキの左手を両手で包んだ
「…だって…寝ちゃったら古代くん向こう行っちゃうでしょ?」
ユキの小さなわがままだった。それも自分の体に無理して…
「ユキが眠ってもここにいるよ…痛いの我慢したらダメだよ…佐渡先生にも怒られるぞ?」
進は痛々しいユキが愛おしくて仕方なかった
「寝ちゃったら古代くんの顔も見られないし…寝て起きたら…これが夢で…」
これが夢で目覚めたらアルフォン邸だったら、と思うと恐ろしくて眠るのが怖い、とそう思っていたのだった。
「…そっか…でももう何も心配しなくていいんだよ。俺はユキの元へ戻ってきた…みんなが
ユキの事守ってくれる。喉は乾かないか?先生のお許しが出たんだ…ちょっと飲むか?」
ユキはそっと首を振った
「湯ざましは佐渡先生の指示でいつでも飲めるようになってるから…」
「ありがとう」
(いつも反対だった…戦闘で俺が怪我してユキがいつも心配そうな顔で俺の顔見てたっけ
見てるだけって…こんなにつらいんだな…)
進は少しユキの気持ちがわかったような気がした
作品名:永遠に…の傷跡 10 作家名:kei