永遠に…の傷跡 10
島たちはこれと言った情報もなく何かが進展する様子もなかったので斉藤の日誌に目を通していた
日誌の転機はテレザート星で戦ったあたりから変化があった
今まではユキと佐渡の名前ばかりが出てきてまるで敵視するかのように古代とコスモタイガーの連中の名前が出てきていた。工作班にもかなり毛嫌いされていたようでそのドンの真田の悪口も結構載っていた
「工作班は船外作業とかあっちこちで作業してるからきっと邪魔扱いされてたんだろうな
空間騎兵隊はどこでも出没してたからな」
真田は笑いを含めてそうつぶやいた
「でも第二艦橋にも来て航路図めっちゃくちゃにしたこともありましたよ。まぁマザーが残って
いるから大丈夫でしが…今思うと全天球レーダー室なんて恰好の遊び場になり兼ねませんよ
恐いもの知らずと言うか…」
島も心当たりがありやはり笑いながらそう言った
「さすがに通信班には被害なかったですよ。なんてったって班長がユキさんですからね!」
相原は得意げに言った
「地球のために…よく戦ってくれたよな…あの時空間騎兵隊を乗せなかったらひょっとしたら
都市帝国を倒せなかったかもしれない…そして斉藤がいなかったら俺も都市帝国と一緒に
運命を共にしていたかもしれない…」
真田は当時を思い出してか辛そうに顔を下に向けた
斉藤の日誌は一日一日の書き込みが長くなる。戦闘のない日でもいつ急に戦闘が始まるかわからない状態…常に神経がピリピリした状態だったのがよくわかる。
そしてデスラーとの白兵戦…テレザート上陸作戦とこの白兵戦でほとんどの部下を失った。この時空間騎兵隊は全滅に近い状態だったのにもかかわらず都市帝国へ突入する時も躊躇せず飛び込んで行った。時々誰かに話しかけるような文章になる時がある。
いったい誰に当てて書いたものなのか…
今度は徐々に文章が短く簡潔になり始めた。斉藤が次の決戦にかける思いが伝わってくる
“ヤマトは今地球に向かって白色彗星を全力で追っている…間に合うのか?”
“古代が会議に出席した。もう大丈夫だきっとやってくれる。全てが終わったら地球に
帰れる…随分遠回りした…部下もたくさん失った…でも死んだのは空間騎兵だけじゃ
ない。古代の部下もコスモタイガーの隊員も…白兵戦で戦闘班じゃないやつも船外に
でて戦ったヤツもいた…島もいない…森さんの元気もない…”
“ヤマトが無事でよかったが他の戦艦は全滅してしまった。ヤマトだけでどう戦うつもりなんだ
古代もけがをした。あいつは少し動きすぎだ。艦長代理ってーんだから少しは現場に任せて
指示だけだしてりゃけがしないですむのによ!…ったく森さんもさらに元気なくなって…
俺が見張りになるしよぉ…俺は介護の経験ねぇぞ!”
“これが最後になるかもしれない…敵要塞を爆破するために乗り込む事になった…古代から
離れちゃいけねぇ…何があっても…俺が帰ってこられなくても…仕方ねぇ…
俺は初めて分かったかもしれない。地球を守ると言う事が。それに対してこのヤマトの乗組員
は生きることと同じくらい大事なことだって事が…俺も…今はヤマトの乗組員の一人だ。
この作戦は絶対に成功させなくてはいけない。たくさん…もっとたくさん”
最後の一日分は途中で切れていた。命令が下ってぎりぎりの状態で書き残そうと必死だったんだろう…きっと最後は‘やりたいことがあった’だろう…それでも斉藤は最期誰にもできない立派な仕事を全うした
作品名:永遠に…の傷跡 10 作家名:kei