永遠に…の傷跡 13
南部は801へ入り織田が来るのを待っていた。モニターにうつる南部の姿を真田と山崎と相原が食い入るようにみていた。
南部がテレビを見ているとポケットから携帯を取り出した。相原は音量を上げる。
南部も相手の声が少しでも聞こえるようにマイクに近づき話をする
「…どうしましたか?」(南部)
<まずいことになりまして…ちょっとお伺いしてもいいですか?>(織田)
「それは結構ですが…以前のように突発で来ないで下さいね…ここは軍の寮ではなく一般の
方も利用するホテルですから…」(南部)
<…わかりました…すぐ伺います>(織田)
南部は冷たいハーブティーをフロントに注文するとモニターに向かいピースすると再びテレビに向かった
今南部の頭の中はいろんな計算が駆け巡っていた。織田はどう出てくるか…一人でくるか…
長官の家に進が行ったときの尾行した3人…名前が分かっていないのは病院のところで待ってた運転手だ…
それを確認しないといけない…
その時ドアをノックする音がしてハーブティーとグラスが二つ届けられた。
それから30分ほどしてフロントから織田が来たと、連絡があった。
織田はかなり慌てていたようで汗を拭きながら入ってきた。
「随分な慌てようですね…冷たいハーブティーでも…どうぞ」
南部は落ち着いた様子でハーブティーをグラスに注ぎテーブルに置いた。
「…出版が…差し止めされました…」(織田)
(…来たな…よかった…止められたか…)
ほっとした様子を見せてはいけないと思い南部の演技は続く
「…え?何故ですか?」(南部)
「…ヤマトの連中が裏で動いていた…部下と連絡が取れなくなっている。」(織田)
「…誰だ?俺に内緒で動いてたのか?…でも織田さんあの記事自信あったんでしょ?
だったらなんで差し止めなんですか?」(南部)
「…それは私が聞きたいところだ…せっかく苦労して組み立てたのに…(小声で)」(織田)
「…組み立てた?(モニターで拾えるように大きな声で)」(南部)
「あ…え…いや…その…」(織田)
「…あの記事…織田さんが作ったんですか?(オーバーにテーブルに“バン!”と音を立てて
立ち上がりながら)」(南部)
「いや…私は…パルチザンからちょこっと聞いた噂を部下にそうだったらいいなと…話した
だけで…いや…ちゃんと取材して裏を取ったって事で…(南部の迫力でさらにあわてながら
必死で言い訳しようとしてる)」(織田)
「そのちょこっとした噂ってどんなですか?(ちょっと冷静になって)」(南部)
「(汗を拭き拭き)森さんが倒れたところで担いで安全な所へ寝かせた、とか…襲われそうに
なったらしいよ、とか…」(織田)
「それから!」(南部)
「捕虜になってたくせに何もないなんて普通ありえないよな、とか…どうやってあの図面を
もってきたんだ、とか…」(織田)
「…それってあの記事に書かれてたことばっかじゃないか!噂を記事にしたのか!それって
織田さん、あんた何したか分かってるのか?あんたのそのくっだらねぇ野心のために俺たちの
ユキさんが犠牲になってるんだ!」
南部は戦闘モード全開で今にも織田を殴りそうな勢いで胸ぐらを掴むと怒鳴り始めた。織田は南部の力に負けてつま先で立ってるのが精いっぱいだった
「あの記事に妊娠してるかも、ってあっただろ?ンなわけねぇだろ?あれだけやつれて…じゃぁ
聞くけどあんたさ、地球のために何したの?今までもそうだけど防衛軍にいて何したんだよ!
俺たちの足引っ張るだけで長官に楯突くだけで何もしてねぇじゃねぇか!!ユキさんは必死で
戦った!パルチザンのみんなと一緒に辛い事だってやったのに…あんた達はただ上から
見てただけじゃねぇか!最前線に行っていつ死ぬか分からない所で働いてみろよ!
俺たちの…俺たちの仲間を還せよ…代わりにお前が死ねばいい!!!」(南部)
南部の顔はモニターの反対側だからよく見えないが泣いているように見えた。山崎がそっと立ち上がり真田の顔を見てうなずきながらユキの部屋から出て行った
作品名:永遠に…の傷跡 13 作家名:kei