永遠に…の傷跡 14
そんなことは露知らずで進はユキの食事の様子を眺めていた。随分食欲も出てきたみたいで朝の主湯は完食した。
「ごちそうさまでした」
ユキが手を合わせたところで
「りんごジュース飲むかい?」
進が白湯で薄めたリンゴジュースを持ってきてくれた
「ありがとう、いただくわ」
小さなグラスに半分くらいのジュースを少しずつゆっくりのんだ
「…おいしい…」
半分飲んだところで一息入れて“また後でいただくわ”と言ったので進もテーブルに置いた
「…地上はどうなっているのかしら…防衛軍の官舎は誰の部屋もあらされてるはず…古代くんも
ご両親の大事なものなくなってしまったかもしれないわ。」(ユキ)
「親からの預かりものは全部地下都市の部屋に置いてあるから大丈夫だよ。それに俺の一番
大切なものはなくなったりしないし…誰にも渡さないし…」(進)
「古代くん…」
お互いそっと手を握り合うことで気持ちを確かめ合った
その時フロントから連絡が来た。対応したのは南部だった
<藤堂さまがお見えです>
「ご案内してください。」
そう答えると5分ほどしてボーイと一緒に藤堂と夫人が並んで立っていた。夫人の目には涙が浮かんでいる。
南部の案内で二人はユキの枕もとへやってきた
「…長官…」
敬礼しようとした進に
「やめたまえ、今はプライベートだ。ユキ…大変な思いをさせてしまったね…本当に申し訳ないと
思っている。家内にずっと怒られっぱなしだった…。無理させてすまなかった…」(藤堂)
「そうよ、あんなにやつれきったよそ様のお嬢様をアメリカなんてところまで連れまわして…
大事に至らなかったからよかったって事じゃ済まないわ、って言ったの。ユキさん、どう?
もう大丈夫なの?」
夫人が涙を流しながらそうユキに話しかける
「…無理を承知で長官に付いて行ったのは私です。長官は私が一人にならないように最大の
配慮をしてくださいました…私の体力がなかったばかりに…本当にご心配おかけしてすみま
せんでした。でもみなさまのおかげで大分よくなりました。私はもう大丈夫です…奥様には
それだけでなくいろんな事に巻き込んでしまって…」(ユキ)
「長官も…ご夫人も私とユキの事で…本当に申し訳ございませんでした。お孫さんにもご迷惑
おかけして…本当にすみませんでした。」(進)
そう言ってユキはベッドから進はユキの横で頭を下げた
「いいのよ、孫もどこにも行けないって、友達同士で安否の確認が取れなかったのね。結局
今朝早く戻って行ったわ。次の留学先の前準備するって言ってね…」
夫人は涙を抑えて話した。
作品名:永遠に…の傷跡 14 作家名:kei