永遠に…の傷跡 15
先生のお許しがでたユキはうれしそうにシャワーの準備をしようとしたが新しい点滴がついている
のを見て
「コレ終わらないとシャワー浴びれないじゃない~」
と残念がった。進は“しょうがないから明日の朝にしろよ”と言いながら山崎夫人が作ってくれた
野菜スープを温めてフロントに電話して五分粥を少し運んでくれるようお願いした。
ちょうどそこへ佐渡がやってきた
「入るぞ!」
ノックもせずまるで自分の家のように入ってきた佐渡は両手にたくさん食べ物をぶら下げてやってきた
「佐渡先生、ノックくらいしましょうよ」
真田が笑いながらそう言うと
「うるさい、わしゃユキが心配で早く会いたかったんじゃ!おぅ、真田君、これ差し入れ。後で
古代と二人で食べなさい。今日はみんなもう帰ったんじゃろ?」(佐渡)
「えぇ…全て今朝にかけて決着着いたので…長官もお見えになりましたし…」(真田)
「朝顔は見れたが…ゆっくりできんかったからのぉ…ユキ…どうじゃ?気分もよさそうじゃな
顔色がええ。(点滴を見て)食欲出てきたんか。少しずつな…時間かけて何回かに分けて
食べんといかんぞ?」(佐渡)
「もう、佐渡先生、私看護師だったんですよ?それくらい分かってます!」(ユキ)
「そうじゃがお前さんたちは自分の事となると全然顧みないからな!ちゃんと言っておかんと
ダメなんじゃ!ヤマトの乗組員も最期の手術が終わってのぉ…術後の経過もいいし…他の
乗組員もぼちぼち退院できるようになったし…一安心じゃ。」(佐渡)
「…佐渡先生、大事な時にお手伝いできなくて…すみませんでした」(ユキ)
「まったくその通りじゃユキ!どうだ?看護されてる側になるととてもつらいだろう?じっとする
事が苦手な古代の気持ちわかっただろう。反対に古代も無理する人間をベッドに縛り付けて
おくのがどれだけ大変かよく覚えておきなさい。まぁったくお前たちは似た者同士じゃからな!
ユキの点滴がすんで自由になったらそれこそ無理するからな、ちゃんと見張っておくんじゃな。
ユキはおとなしくすることじゃ。そうでないと退院できんぞ」(佐渡)
ユキは早速シャワーを浴びようとしたこと内緒にしておこうとそう思った
「それと南部から連絡があって保養所の件だがわしは付いて行けんが保養所の中に病院が
あるって聞いとる。まぁ2.3日してユキの容体が大丈夫ならわしはゆっくり休む、という意味で
いいとおもっとる。ここにいても外にも出れんじゃろ…」
佐渡の言葉にはあの噂がまだ尾びれ背びれを付けてさまよってる事を指していた。ここにいてもユキは何もしてないが知らない人間に後ろ指さされるかもしれない、そのことによってまた体調を崩すことを佐渡は懸念していた。進は観念したように
「ユキはとっても行きたがってるんです…」
そう言うと
「そうかじゃぁ行って来い。ちょっと山下君と話そうと思ってたからその事も伝えよう。」
佐渡はそう言うとさっさとユキの部屋を出て行ってしまった。真田は差し入れの袋を持ったまま見送るようになった。そこへ入れ替わりにユキの五分粥が運ばれてきてほんの少し卵が混じっていた。運んで来た係りの者が
「そろそろ栄養のあるものを少し入れた方がいいかもしれないと申しておりまして…もし普通の
お粥がよろしければすぐ用意しますが…」
と言ったので進と真田はシェフの気持ちをありがたく頂くことにして
「ありがとうございます。これを頂きます。」
と言って受け取った
作品名:永遠に…の傷跡 15 作家名:kei