永遠に…の傷跡 16
「ユキ、リンゴジュースあるよ、飲む?」
進が冷蔵庫を開けて言うと
「うん、頂こうかな…」
ユキがそう返事をするとマグカップにリンゴジュースを少し入れてさっきのマグカップのお湯を注ぐ
「リンゴジュースが結構冷えてるからちょうどいいと思うんだけど…」
そう言ってユキに手渡すと自分はビールを手にした
「ずるい、古代くんだけビール…」
「いいだろ?ずっと心配で飲めなかったんだから…ほら、乾杯しようか?」
進は勝手にユキが持ってるマグカップに缶ビールを当てて“カンパ~イ”と言ってゴクゴク飲んだ
「乾杯」
ユキはそう静かに言うとちょっと温かいリンゴジュースを一口飲んだ
二人はしばらくソファーに座りテレビを観てゆっくり過ごした。ニュースになると昨日の事件が流れたがけが人がすでに退院した事、犯人グループも昨日のうちに拠点まで押えられ完全に鎮圧出来たことなどが取り上げられていた。
事件当初けが人の名前が公表されユキの名前が出ていたがユキの名前が伏せられていたことから軍からの指令で名前は公表しないよう取り計らいがあったようだった
コメントには南部の父親が南部重工の社長という立場で出していた。その事件現場に息子がいたなどということもなく普通の事件として片付こうとしてるのがわかった
「よかったわ」
ユキが何気なく言った一言に進が“何が良かったの?”と聞き返すと
「けがしたのが古代くんじゃなくって…私が気付いた時もう古代くんも南部くんもコスモガン
片手にスタンバイしてたもんね。その時思ったの。あぁ私はヤマトの乗組員として失格だなって
常に危機感を持って、って言われてるのに思いきり油断してた。」
肩を落とすユキは進に聞いた
「…いつから…ジェットの中がおかしいって思ったの?」
「いつから…って…そうだな、階段に足をかけた時…かな。あの時ユキが俺たちを振り返らず
伏せていたらけがしなかったかもしれないな。」
進は昨日の襲われた瞬間の事を思い出しながら言った
「ユキは俺たちと同時に気付いてたんだ。俺たちはコスモガンを持っていたがユキは何も持って
いなかった。自分の事より俺たちの心配をしてしまったから伏せるのが遅れた…自分の事を
最優先してればけがしないで済んだんだよ。これはユキの職業病だろうね。それでもあの
状態からよく応戦したよ。さすが…歴代の戦士だ。ヤマトの乗組員として失格なんてことないよ
それに失格、にしたら真田さんが一番怒ると思うけどなぁ…一番弟子…だろ?」
進は‘一番の愛弟子’だろうな、と思いながらそう言った
「ユキのお陰で俺たちはけがもしないで済んだから…本当にありがとう、だよ。」
進はそう言って優しくユキにキスをした
「…ビールの味がするわ」
ユキはそう言ってにっこり笑った。
しばらくすると食事が運ばれてきてユキには朝のような少し柔らかく炊いたご飯とお吸い物と白身の魚の煮付け、進にはボリュームたっぷりのハンバーグランチが運ばれてきた
作品名:永遠に…の傷跡 16 作家名:kei