永遠に…の傷跡 16
あの男たちは過激派の一部だった。以前から南部重工が軍の仕事を一手に引き受けているのがおもしろくなかったらしく南部の父を襲う計画を立てて数日間プライベートジェットがエアポートに来るのを待っていたそうだ。
全員がユキと進を囲んでいるとそこへ南部の父がやってきた
「親父…」
南部がびっくりしていると
「…皆様…大変なことに巻き込んでしまって大変申し訳ございませんでした。」
そう言って入るなり深々と頭を下げた。驚いてるクルーをよそに
「管理体制が甘くなっているのに気付かず森さんに大変なお怪我を負わせてしまいました。
謝って済む事ではないと承知の上ですが…古代さん、本当に申し訳ない。」
そう言って土下座しようとしたので進は慌てて
「そんなことしないでください。謝るなんて…むしろ私は感謝しています。今回の事でお世話に
なったのはこちらの方です。今回の事はイレギュラーで…予見することは不可能だと思います。
でも反対に社長が乗り込んでたらもっと大変だったと思います。我々は訓練をうけていますから
大丈夫です。」
進がきっぱり言うと
「そうですよ…それよりジェットの方は大丈夫だったんですか?」
島が話を振った
「あ…実はあちこち穴があいてしまいまして…」
「じゃぁ…しばらく使えないって事?」
南部が話に参加して来た
「康雄…すまんな、」
父親は息子に頭を下げた
「クルーにけがはなかったんだろ?それだけでも良かったじゃないか。」
南部がしれっとそれをかわす
「森さんのお怪我は?」
「数針縫いましたがドクターもこれくらいなら大丈夫と太鼓判押してくれました。これくらいなら
傷が残ることもないだろうとの事です」
進がユキに代わって答えを返すと
「…そうですか…それは良かったです。若い女性の体に傷が残ってしまったらと思うといても
立ってもいられなくて……いや、森さんならぜひうちで…お世話を…とも願ったり叶ったり
なんですが…」
「親父、どさくさにまぎれて何言ってんだよ」
南部が横やりを入れる。そのやり取りが面白くてまわりのクルーは笑いをこらえていたが
「私は大丈夫ですから…」
ユキのやんわりした声がその場を収めた。その時南部の父親の携帯が鳴り警察から呼び出しを受けたようで“すみませんが失礼します”と言って病室を出ていった
「おい、南部、織田さんに言ったアレ、実はやっぱり本気だったんじゃないか?」
とぼけながら太田がつつくと
「はえ?何のことでしょう?(汗)」
「ほら、“俺立候補しちゃおうかな”ってやつ!」
相原がわざとらしく大きめの声で言うと南部は珍しく真っ赤になって相原を追いかけた
(スターシアさん、サーシァちゃん…ありがとう。私大丈夫…)
いつものヤマトの空気を感じてユキは心の中でスターシアとサーシァに感謝した
「…ところで何の立候補?」
ユキは人差し指をあごに当ててちょっと小首をかしげてそばにいた島に聞いた
「ユキのお相手立候補!」
島はユキの耳元に自分の手を当ててこっそり教えてあげるとユキは真赤な顔になって
「え?」
とちょっとびっくりしたが意地悪そうに
「私と南部君かぁ~考える余地ありそうね!」
ちょっと意味深っぽくユキが言うと笑ってた進が一瞬真顔になった。それを見て島が笑う
「島、何吹き込んでるんだよ」(進)
「そうだよなぁ、世間的には誰が立候補してもおかしくない状態のはずだ」
真田が俺も、と言わんばかりに手をあげて発言すると
「真田さんまで!」
そう言って進は笑った
作品名:永遠に…の傷跡 16 作家名:kei