永遠に…の傷跡 16
しばらくするとユキの夕食が運ばれてきて同時に佐渡が進への差し入れを持ってきた
「すみません、いつも…」
進がお弁当を受け取りながらお礼を言うと
「いいんじゃよ。わしには治療と…これぐらいのことしかできんでな。」
そう言うと当直だから、といいながら部屋を出て行った
「当直でも飲むのかな?」
進がそう言うとユキは笑いながら
「もちろん…アレは佐渡先生のカンフル剤だからね。」
そう答えた。
佐渡が持ってきたユキの夕食は少し柔らかく炊いたお米と白身魚の煮付け(薄味)とお吸い物だった
「「いただきます」」
「ユキ、ゆっくり食べろよ。無理して食べなくていいからな。」
ユキは久しぶりにおかずがあるので喜んでいたがほんの少しなのにすぐお腹がいっぱいになってしまい思うように食べられない。なかなか箸が進まないユキに
「少し休憩してまた後で食べればいいよ。」
そう言って来た時にかぶせてあったラップをして下げた
「あれくらい食べられると思ったのに…」
ユキがちょっと残念そうに言うと
「一週間前血を吐いて倒れた人間の言うこととは思えないなぁ~まぁそれだけ復活してきてる
証拠だから…」
そう言って麦茶を薄めて持ってきてくれた
「…古代くんは今日、ここに泊まるの?」
「うん、そのつもりだけど?」
「…よかった…。安心して眠れそう…なんだかいろんな事があって…この一週間すっごく大変
だったような気がするの。」
病院の七分丈のパジャマの袖からほっそりした腕がよく見えた
「うん、本当にいろんな事があったね。…ユキ、みんなと一緒に保養所行った後少し長く休みを
もらって二人でゆっくりしようか?」
進は薄くなってきたが未だ痛み止めの注射の痕が消えない左腕を見ながら言った
「いいの?」
ユキの表情がパッと明るくなる
「きっと2人でゆっくり休みなんてなかなか取れないだろうししばらく乗る戦艦が出来るまでは
地球勤務だけど復興事業に参加し始めたらそれこそ休み取れなさそうだしな。
それとも…お母さんとお父さんのところに戻るかい?」
ユキは首を横に振った
「俺としては少し実家に行った方がいいと思うんだけど…」
「だけど?」
「本当の気持ちは少しでも長く一緒にいたいって思う…」
進はそっとユキにキスをすると
「あたしも…一緒に…ずっと一緒にいたい…」
そうユキも答えた
それからユキはもう一度食事にチャレンジして薬を飲んで眠りについた
作品名:永遠に…の傷跡 16 作家名:kei