Wizard//Magica Infinity −8−
浴衣姿の さやかちゃんはシングルサイズの俺の布団に枕と一緒に無理矢理入り、ぎゅうぎゅう状態になり一気に寝苦しくなった。
俺たちは自然と背中合わせとなる。
「ちなみに さやかちゃん。こうやって異性と一緒の布団で寝るって初めて?」
「えっあ、うん。そうだけど…あっでも!私の心は既に恭介のものなんだからね!!」
「はいはいっわかってるよ」
「…なんかお泊り会みたい!」
「何年振りかな…こうして友達と一緒に横になったの。随分久しぶりな気がする」
「私はよく まどか や仁美とお泊り会開いて寝ながら色々と話したりとかしたな~」
「話ってどんな内容?」
「そりゃ女の子が集まれば恋バナでしょ?」
「恋バナって…まだ子供なのに」
「恋する乙女に大人も子供も関係ないのよ!」
「へぇ」
「あ!今流したでしょ!?」
「別に~」
「もうほんっとあんたはこういうことには無関心だな!…よく杏子もこんな奴を好きになったなぁ…」
「…え?」
「いや、なんでもないわよ」
「そう。…そういえば朝から聞き忘れてたけどさ、結局さやかちゃんって目覚めたの?」
「何言ってんのよ。今、起きてるじゃない」
「そうじゃなくて、俺が魔法少女から人間にしてあげたじゃない」
「…っ!…あ、あぁ~そうね。そのことは明日話すわ!…その、今は話せない」
「そっか…」
「ねぇ…ハルト」
「何?さやかちゃん」
「あの時のこと…その…まだ気にしてる?」
「あの時?」
「ほら…そのっ…山の中で…えっと…」
「あぁ~、俺と さやかちゃんがキスしたこと?」
「ちょっ!?デリカシーなさすぎ!!ほんっと信じられない!!」
「うぐっ!…ちょ、狭いんだから肘打ち止めてよ」
「こほんっ…ま、まぁそのことなんだけど、さ…」
「大丈夫だよ。確かにびっくりしたけど、さやかちゃんの本当の気持ちはもう知ってるし、ソウルジェムを浄化したときだって散々俺に謝罪してくれたじゃない」
「そっか…なら良いんだけど…」
「ねぇさやかちゃんさ…」
「何?」
「もし…今度、恭介と会えれば、ちゃんと伝えるんだよ…自分の気持ち」
「っ…うん」
「恭介も待っているからさ…大丈夫、今度こそ成功するよ」
「そう…ね……今度、ちゃんと…会えたなら…」
すると、となりの彼女からすすり泣く声が聞こえてきた。
俺は頭を向けようとした…が。
「こっち見ないで!」
「え、あ、あぁ…」
「今、私すっごい顔してるから…ごめん…ぐすっ…」
「わかったよ」
「ハルト?」
「なに?」
「こうやって…周りに友達がいるって…すっごいことなんだね」
「うん…今日一日、さやかちゃんと一緒にいて、とても心強かった」
「あたし…やっぱり一人じゃなにもできないみたい!…ありがとうハルト。最後にさ…一緒に楽しいこといっぱいできて…本当に…ありがとう」
「…さやかちゃん?」
「私もう寝るわ!…あ、変なこと考え無いでよ?」
「おやすみ」
「あ!私が先に寝る!」
そして俺達は目を閉じた。
背中合わせのまま。
次第に彼女の寝息が聞こえてくる。とても可愛らしい寝息だ。
気がつくと俺にも睡魔が押し寄せていた。
そして、今度こそ意識を失い、眠りへと入っていった−−−。
・・・
「ん…んん……」
「ふあぁぁ……」
小鳥の囀る声…は聞こえて来なかったが、窓から入った太陽光のお陰で気持ちの良い朝を迎えることができた。
俺とさやかちゃんはほぼ同じタイミングで目覚めた。
お互い、寝癖が酷く、とても外を出歩ける状態ではない。
「おはよ…さやかちゃん…ふあぁ…」
「おはよう…ハルト……ん?」
「どうしたの?さやかちゃん」
「ねぇ……ハルト」
「なに?」
「ハルト…私が寝ている間…胸触ったでしょ…こんなに浴衣はだけて無かった気がする」
「・・・いや、例え他の子とこのようなシュチュエーションになって彼女の身体に触ろうと考えても、さやかちゃんに対してそのような気にはなら−−−」
「ふんッ!!!!」
「ぐふっ!!…だから…肘打ち止めてって……あと本当に触ってないから……ね?」
それからお互い身支度を済ませホテルを後にする。俺は着慣れた黒いジャケットと赤いパンツ、愛用のブーツを身にまとい、さやかちゃんは見滝ヶ原の制服。
空は快晴、ガソリンも満タン、面影村までのルートは完璧。
いよいよ、今日は面影村に向けて一直線だ。
エンジンを動かし俺とさやかちゃんはバイクに乗る。
「今日も良い天気ね!さぁてハルト、昨日みたいに飛ばして一気に行くわよ!」
「あぁ、振り落とされないようにしっかり掴まってて!」
フルスロットルで街の中を走り、昨日と同じく高速道路へと乗り一本道をひたすら走っていく。
目的地は面影村。
いよいよ、ここからラストスパートだ−−−。
作品名:Wizard//Magica Infinity −8− 作家名:a-o-w