ネコミミライフ。
「じゃあ、後は頼むよ。帰りは明日の夜になると思うから。何かあったらケータイに連絡な」
がくぽがネコミミを付けて約二週間がたった。当初の不安などないもののように全くつつがなく時間は過ぎて、明日でモニターは終了という土曜日の朝。
マスターは友人達と一泊で遊びに行くらしい。
「いってらっしゃーい。お土産はアイスでいいです」
朝っぱらからガリ○リ君を齧りながらカイトはひらひら手を振る。
「お前はそればっかだな……あっ、やべ、もう出ないと」
マスターはバタバタと荷物をひっつかみ、玄関へ向かう。
「いってらっしゃいませ」
がくぽがきちんと手を揃えて頭を下げる。
「がくぽはカイトと違っていい子だな~。がくぽにはお土産買ってくるからなっ。行ってくるっ」
バタンと勢いよくドアが閉まって、慌ただしい足音が遠ざかっていく。
「いっつも出かける直前で慌てるんだから…」
苦笑いしながらカイトががくぽを見ると、どこか浮かない顔をしていた。
「どうかしたの、がくぽ」
「何でもないでござる」
がくぽは素気なく答えて、そのまま自室に行ってしまった。
マスターが家を空けるときはいつも寂しそうだけれど、ちょっと様子が違うみたいに思える。身体の調子でも悪いのかと心配になって部屋に覗きに行くと、そうではないと言われて、今日は曲の練習を一人でしたいと追い出されてしまった。
(そういえば、昨夜も少し元気がなかったような気がするな…)
どうしたんだろう?
日課の家事をこなしたり、曲のチェックをしていても気になってい仕方ない。
がくぽが昼食後もすぐに部屋に戻ってしまったのを見て、さらに戸惑いを深くするカイトは、はたと嫌な考えに至る。
もしかして俺避けられてる?知らないうちにがくぽが怒るような事しちゃった、とか?
その後はもうぐるぐるとネガティブな思考が巡ってなにも手に付かなかったカイトだが、夕方になってやっと部屋から出てきたがくぽは全く普通だった。
(あれ??)
夕食の準備を手伝ってくれている時も、特に気分も機嫌も悪そうじゃなかったし、食事中も他愛ない会話で盛り上がった。元気がなさそうだと思ったのは気のせいだったんだろうと、食事が終わる頃にはカイトは昼間悩んだ事もすっかり忘れ去っていた。