君と僕と星の祈り
幻想が脳を占め、駆け巡る。また、あの夢だった。やけにリアルで、嫌になる程にしめつけられる。そんな、悪夢。
(こうたろう)
またしても無意味に名を呼ぶ。そんな自分が、どうしようもなく愚かで、滑稽だった。
息を吸えば、薬品の臭いが鼻につき引き戻されるかのように目が覚めた。天井は、限りなく純白に近い。
「気が付いたか?」
落ちてきた言葉に微かに漂っていた意識がはっきりとする。煙管を片手に、ルイ先生が手早く俺の状態を診断する。
「君が倒れるなんて、珍しいこともあるんだな」
呆れ半分心配半分。ルイ先生はそう言って、俺に寝不足だと告げた。寝不足。まああんな夢を毎日毎日クソッタレと思うぐらいに見せられてれば寝れもしないよな。溜息交じりに半身を起こし、上履きを履く。
「最近、悪夢をみるんですよね」
「悪夢?」
「ええ。すごく、嫌なゆめを」
珍しいモノでも見るような目をしたルイ先生に、俺は小さく笑った。突然と発した言葉に、回答が返ってくるはずもないと、俺は何処かで知っていたのかもしれない。
「龍、」
呼び止めるかのような声を、俺はあえて無視をした。だって、今此処でその答えを聞いてしまったら、それを認めなければならないじゃないか。
それは予兆。ことが起こることを知らせるための悪夢。近い未来、それは現実となる。確信していた。
きっと俺が普通のにんげんだったならば、ルイ先生のカウンセリングは正しく行えていただろうに。けれど俺はその普通ではない。他人とは別のイキモノであるから。
「なんでもないですよ。ただの、戯言です」
にこりと笑って、扉を閉めた。ぴしゃりと言う音がどうにも拒絶するように聞えてしまい、少し後悔をする。
ゆっくりと教室に戻れば、心配していたといわんばかりの彼女と扉の前で再会。だいじょうぶ、そう告げれば少しばかりやわらぐ心配のいろ。甲太郎は怪訝そうに俺を見て、暢気にアロマをふかしやがった。俺がぶっ倒れた所為で勝負は延長。とりあえず今日は仕方なしにカレーパンをおごってくれた。