君と僕と星の祈り
夢が現実になる瞬間とはこんな気持ちなのかと、息を吐く。予想していた。予感していた。悪夢に見ていた。
積み上げてきた信頼も友情も、目の前の男は容易く打ち砕いた。それほどまでに決意は固い。銃を抜く。安全装置を外す。ためらいは、何処にも存在しなかった。
がらがらと崩れていく遺跡の中で夢の続きをうたう。
甲太郎、名前を叫ぶ。手を伸ばす。必死で追いかける。それなのに、近づけない。満足そうな顔をした甲太郎と阿門。なんで。どうして。どうして、死を望むんだ。怒りも悲しみも喜びも、総ての感情が吐瀉物のように混ざり合って言葉にならない。ただただ、その名前を呼ぶだけだ。伸ばした手はやはり空虚を掴んで、届かなかった。
×××
前にもこんなことあったな、なんて思いながら目覚めたばかりの頭で天井のシミを数える。
きつい薬品の臭いも痛みでいまは気付かない。右を見れば晴れ渡る太陽。左を見れば雨のように泣いている彼女。
「や、っちー……」
名前を連呼した所為か、思っていたより声は擦れていた。声に彼女は顔を上げる。途端に雨から大洪水。わんわん泣き出す彼女の隣で、幽花ちゃんが肩を支えてあやしだす。軋んだ左手を伸ばして、ゆっくりとその手に触れる。だいじょうぶ、カタチで紡ぐ。それで少しは和らいでくれたのか、小雨に変わってくれた。
ふと。こんな声にした元凶が姿を見せないことに気が付いた。いやな想像が背筋を這う。やっちーに聞けば、部屋に居ると言う。見舞いぐらい来やがれ。……殴ってやりたくなった。
どうやら俺は三日も意識を失っていたらしく(おそらく寝不足もひとつの原因だろう)、あと一日休息を保健室で取ることとなった。誰もいなくなった部屋で見たH.A.N.Tのメール文。鈍器で頭を殴られた気さえするそれ。畜生と呟いて、眠りに落ちた。